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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十七章 共同戦線
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ヤバい奴

―コットニー地区 朝―

 かなり驚かせてしまったようだ。というか、ドン引きされている。彼女の目は、完全にヤバイ奴を見る時のそれだ。

 確かにやり過ぎたかもしれないけれど、一応助けてあげたのだから感謝くらいして欲しいものである。


「そのかごの……」


 僕が歩み寄ると、その分彼女は尻餅を着いたまま後退する。僕が一歩踏み出すと、また彼女が一つ、いや二つは下がっていく。


「来ないで! 来ないでっ!」

「……酷いなぁ」

「酷いのはそっちでしょ。あんなやり方……最低!」

「最低? 最低なのは、さっきのマフィアの方じゃないか。僕は助けてあげたんだよ」

「助けてなんて言ってないでしょ!」


 コットニー地区に住んでいるカラスにしては、随分と威勢のいい少女だった。ここに住んでいるカラス達は、大体陰気で見るだけで不幸になりそうな面構えなのに。

 ただ、今のこの状況ではそんな彼女の扱いに少々困ってしまう。僕が悪かったとはいえ、これでは何も進まない。無駄だらけだ。


(これじゃあ、話にならないな。とりあえず、逃げられたら困る。こっちに引き寄せるしかないね)


 僕は鎖を出して、彼女の体に巻きつけた。


「ひぃぃっ!? 何、何なの!? 何者なの、ってきゃああああっ!? がくっ」


 予想だにしていなかった拘束、そして体を見た時に真っ赤に染まった体を見て、彼女は色々と衝撃を受けてしまったようだ。そのまま、白目を向いて後ろに倒れた。


「あ~あ……」


 とりあえず、気絶したままの彼女を引き寄せた。


「血……ヤバイ……」


 などと、気絶しながらも呪文のように言葉をぶつぶつと呟いている。


(はぁ、とりあえずこの子を連れて一度戻ろう。そこで、クロエにご飯をあげて……完全に回復させないと)


 クロエと僕と根本的な部分が一緒かどうかも判断したい。恐らくは、大丈夫だろうとは思うが。


(それと、このクッキーとやらの作り方を教えて貰わないと)


 僕は、かごからクッキーを取った。血で赤く染まっていたが、どんな味がしてどれくらい美味しいのかが気になり、口に入れた。

 元々の色は茶色ではなく、白っぽい色をしているのでドールの望む物とは異なるのかもしれないが、それはとても美味しかった。


(サクサクしていて、噛み締める度に味わいが口全体に広がっていく。ちょっと口の中の水分が奪われていく感じがするけど。これがドールの食べたい物、か)


 ドールもほとんど知らないような口ぶりだった。ここで、きっかけを掴めたのは助かった。


「さて、行こうかな……」


 そして、僕は彼女を抱いてアーリヤ様の邸宅に戻った。

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