表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/768

新たな力

―アーリヤの邸宅 朝―

(何故だ? 何故、屈さない? もう力も気力も、ほとんど残っていないはずなのに。一体何故……)


 彼女を昨日拘束してから、それなりに時間が経過したはず。徐々に力を奪っているというのに、クロエは未だに何も明かそうとはしない。


「うぅ……あぁ……」


 床に伏せて、うめくような声を漏らす彼女。言ってしまえば楽になるということが分かっていながら、どうして明かそうとしないのか。僕には分からない。家族でも友達でも何でもないのに。


「ねぇ、そろそろ諦めたらどう? 言ってしまえば、君はすぐに自由の身になるんだよ。こんな苦しみも味合わなくたっていい。君にとって、そんなに大事なことじゃないじゃないか。僕にとっては大事な過去だけど」

「諦めない……守る!」


 彼女の決意の目は揺らぐ気配はない。決意の炎が煌々と燃えている。


「そうかい。なら――」

「面白そうなおもちゃで遊んでおるのぉ」


 背後から心が落ち着く声がしたかと思えば、温もりを感じた。


「アーリヤ様……」

「この力っ! まさか、あんたが……!? 薄々と感じた邪悪な気配はあんただったの? じゃあ、巽君は……!」


 クロエは酷く動揺した様子で、小刻みに体を震わせた。


「ほう、薄々でも感じておったとは流石じゃのぉ。じゃが、これが童の手に堕ちたことに気付くのがちと遅かったのぉ」


 アーリヤ様は、僕の頬に触れながら続ける。


「巽よ、まだ気付いておらんのぉ。まだ特別な力が使えることに。欲深いそなただからこそ、成し得るものじゃ」

「僕だから?」

「駄目、騙されないで。惑わされないで! お願い、目を覚まして! アーリヤ! こんなことして許されるとでも――」

「うるさいっ! アーリヤ様に馴れ馴れしく話しかけるな!」

「あ゛あ゛っ!」

 

 僕が鎖の縛る力を強めると、クロエは金切り声にも等しい叫び声を上げた。鎖は限界まで縛っている。これ以上縛れば、僕は彼女の命まで奪ってしまう。それではいけない。それでは、彼女の思うがままだ。真相を持ったまま、あの世に逝くなんて許さない。


「そう腹を立てなくても良い。可愛いのぉ」

「すみません……」

「フフ、折角のおもちゃがここにあるのじゃ。それを有効活用して、そなたの力を確かめると良い。わらわには感覚として、その力の使い方が伝わってくる。教えてやろう。さあ、その女子(おなご)の前に立て」

「はい」


 言われるがまま、僕は苦悶の表情を浮かべ床に伏せる彼女の前に立った。


「た……つみ君?」

「その女子に手をかざせ」

「はい」


 何をされるのかと怯えた顔の彼女に、僕は手をかざす。すると、事はすぐに起こった。


「きゃあああ、あ゛あ゛っ !? 頭が割れるっ、やめ……いやあああっ!」


 彼女の体が紫色に発光し始めたのだ。今までになく取り乱す彼女にはとてつもない苦しみが、それに伴って与えられているようだ。僕には想像もつかないが。

 すると、間もなくして彼女は声を発さなくなった。焦点の定まらない目で僕を見ている。気絶している訳ではないようだが、妙な不気味さを覚えた。その彼女の体から、ぬっと紫色の発光する球体が出てきた。


「これは一体?」

「それは、女子の負の感情の塊じゃ。さあ、それを掴め」


 僕は恐る恐る、その発光体を手に取った。瞬間、それは形を崩し、禍々しい光を放ちながら彼女に降り注いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ