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私と共に

―アシュレイ 王宮 夕方―

 あれから数日が経過して、不正入国の疑いを無事晴らした美月姫達は、王の命令により王宮に身を置いていた。それが、美月姫は不満なようである。何度も逃走を繰り返し失敗した結果、あの熊鷹とか言う男と引き裂かれ、一室に事実上の監禁をされていた。

 私はその監視を任され、ずっと彼女の様子を見つめていた。なんて楽しくて幸福な仕事だろう。心が洗われる気分だ。美しい花を見ている気分だ。


「……ねぇ、いつまで私を見ているつもり? 心配しなくても、私はもう脱走なんてしないわよ」


 無表情でベットに座る彼女は、約八時間ぶりに口を開いた。私は、随分と嫌われてしまっている。


「王様からの命令なんだ。フフフ……」

「だとしたら、よっぽど妙な命令を下すのね」

「ほう?」

「この国には騎士もいれば、兵士もいる。この王宮を守っているのは彼らでしょ。なのに、一国の姫の私をこの王宮で警察である、しかもあの女の人の部下であるあんたが守るなんて不可思議じゃない?」


(弟よりは優秀みたいだ。才色兼備か。嗚呼、最高だ)


「随分と知ってるんだね」

「……弟よりは真面目なのよ。弟が行く国のことは、よく調べているわ。まぁ、今回は気が動転して大事なことを忘れてしまっていたけど」


 彼女の忘れてしまっていたのは、我が国と鳥族との長く続く因縁のことだろう。

 

「なるほど。でも、王様の命令の真意を一般市民である私が理解することは出来かねる。命令されたがままに行動するのが、定めなんだよ。疑問を抱いている暇ない。それに……美しい姫君を見る仕事なんて最高じゃないかっ!」

「……嫌い」


 私は私なりに愛を伝えたつもりだったのに、完全に跳ね返された。彼女のハートを射止めることは、出来るだろうか。私の愛を受けとめてくれる日は来るだろうか。全てが終わってしまう前までに。


「それより、熊鷹はどこ?」

「さぁ?」

「はぁ?」

「まぁ、これは予想だけど……鳥族である彼は一人ぼっちで苦しい思いをしてるかもね。他国の所有物である彼をぞんざいに扱うことはしないだろうけど。この国では鳥族は孤独だから……孤独の元凶である王がいるここで、鳥族である彼が心豊かに過ごせる訳がないだろうさ。君が何度も脱走を試みたりしなければ、一緒にいれたのに」


 あれには興味がないから、本当にどこにいるかは分からない。けれど、この部屋よりは遠い場所にいることは間違いないだろう。


「あっ、そう。ねぇ、私はいつまで拘束される訳。私は元々、お忍びでここに来たのに」


 彼女は目線を逸らすと、俯いて淡々とした口調で言った。

 

「狙撃されてしまった以上、美月姫にこれから先に何かあるかもしれないのに放置する訳にもいかないだろう。向こうが意図して狙ったのかは不明な分、余計恐ろしい。美月姫の命が奪われてしまうのは最悪だ。こうなるのは、致し方ないだろう」


 私はどこからともなく溢れそうになる笑いを堪えながら、真面目に答える。一応、事実としてはそうだ。命を預かっている身なのだから、それが脅かされるなら必ず守らなくてはならない。それが王の意だ。


「まぁ……どうしてもって言うなら案あるよ。ただし、私と一緒に行動するのが条件だけどさ」

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