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変わってないけれど、変わった男

―学校 夕方―

 その姿は数年振りに見ても、何一つ変わっていなかった。数年程度なのだから、大きな変化がないことは分かっている。イメチェンするタイプの奴でもないし。こんなに見た目が変わらないことがあるかと、こいつだけ時がとまったのではないかと思うくらいに変化がない。

 けれど、その一方で違和感を覚えた。外見的なことに変化は不自然なくらいにないのに、こいつから感じる僅かなオーラや気配は、まるで別人のように変わっていたからだ。


「……お前、しばらく見ねぇ内に雰囲気変わったか?」


 俺がそう尋ねると、アレンは笑顔を浮かべながらも困惑するように答えた。


「えぇ? 気のせいじゃないかな。どっちかと言えば、変わったのはそっちじゃない? 俺はな~んにも変わってない。フフ……」


 アレンは両手を広げて、くるりとその場で回って見せた。そんなのは分かっている。見た目はちっとも変ってないことには、とっくに気付いているのだから。


「んん~……そう、かねぇ」

「先生、お知り合いなんですか?」


 すると、メニューをまじまじと見つめていたマイケルが俺達の会話が気になったのか入ってきた。それをきっかけにするように、他の選抜者達も言葉を発し始める。


「マジすか? え~……」

「え~……って何だよ!?」

「ジェシーが……こんなオシャレそうな人と知り合いなんて、ちょっぴり驚き。というか、このカフェに来てたことすら驚き」

「オシャレそうなんて照れるなぁ。でも、これは制服だよ。オシャレなのは、俺じゃなくてこの制服だと思うよ」


 アレンは、照れ臭そうに頭を掻いた。


「いいえ、普通の人が着てもそうはならないと思います。例えば、ジェシー教授みたいに」

「うんうん……って、おい!? ちゃっかり俺のこと馬鹿にするのやめろ!」


 確かに、こいつはありとあらゆるものを着こなすタイプだ。きっと、こいつが着れば、ぼろ雑巾だってオシャレに見える。

 しかし、普通の人が着てもそうならないの例で俺を出すのは許されないと思う。俺の存在そのものがダサいみたいではないか。


「ハハハ! 素敵な生徒達を持ったんだね、ジェシー教授。以前の君は、いじられるようなタイプじゃなかった……見ない内に、君の中で何かが変わったらしい。悲しくもあり寂しくもある。人……は成長をいつまでもするってことかな」

「成長なんて言われる年齢でもねぇよ。加齢のせいで舐められるような男になったってことだろ、は~ぁ」


 言われてみれば、この数年……アーナ先生の所に入り浸るようになってから急激に生徒達と関わりが増えた気がする。


(彼女があんなんだから、生徒が真似してるとか!? いや、でも知らないだろ。やっぱり、加齢か!?)


 いよいよ、この身体にもガタがきたのかもしれない。そもそも、これだけの時持ったことが奇跡だ。俺自身も未知に挑戦し、よく分からぬままここまで生きてきた。そんな中で、少しずつ身体が老いていくのは感じていた。そろそろ交換時か、元に戻る時なのかも。


「……先生、違いますよ」

「え?」


 何が違うのか、その詳細を尋ねようとした。


「いえ、何でもありません。それより、注文いいですか?」


 しかし、マイケルはそれを拒絶するかのように話を逸らした。


「は~い、どうぞ」


 そして、マイケルはプレミアムケーキを注文した。他の奴らもそれぞれ絶対普段食べねぇだろというような高そうなスイーツを注文した。

 お陰で、俺の財布はかなり軽くなった。

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