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選抜者に告ぐ

―ジェシー 学校 夕方―

 あの後、すっかり疲れ果ててしまった選抜者達のことを考えて今回の授業はなしにした。タミはあれだけの魔力を使ったにも関わらず、かなりピンピンとしていた。一応、休憩を取ることを勧めたが「必要ない」と座り込んだ者達を静かに嘲笑いながら去っていった。


「……先生、彼は一体何者なんですか」


 選抜者の中のリーダー的立場であるマイケルが、怪訝そうな表情で問いかけた。


「何者か……それは説明が難しいな。個人情報的なことで言えば、俺はそこまでのことは知らない。日本列島から入学してきた若い男。ただ、最初と印象がかなりちげぇんだよなぁ」

「今の小生意気で癪に障る印象ではなかったんですの? あんなにクソみたいな男、猫被ってどうこうって話じゃないと思うんですの。隠し切れないクソさって言うんですの?」


 マリーが、不機嫌そうな様子で俺を睨みつけた。俺を睨みつけられても困る。


「そうだぜ。あんなに生意気なことを堂々と言うような男ではなかったのは確かだ。内心ではどう思ってたのかは知らねぇよ? でも、印象で言えば謙虚と言うか……あまりはっきり物を言うような奴ではなかった」


 しかし、それはタミが久々に学校に来るようになってから、がらりと一変した。


「うっそ~ん。全然そんな感じには見えなかったんだけど」


 ケビンが首を激しく横に振る。否定されても困る、少なくとも他者に見えてた印象では俺の感じていたのと変わりないと思う。他学年であり、学科も違う彼らには分からないかもしれないが。


「……ヒック、怖かった。彼が後輩だなんて怖くて怖くて……」

「大丈夫ですよ、私がいますから」


 いつも物静かで陰で震えている大人しい少女メアリーが、目に涙を滲ませながら訴える。そんな彼女に優しく寄り添うジョン。恋人同士という訳ではないようだが、二人はよく一緒に行動している。

 早くどっちかが勇気を出せばいいのに、心からそう思う。


「ジェシー、あの力本当に彼のもの?」


 すると、神妙な面持ちでベッキーが俺に問いかけた。少々馴れ馴れしいのは、もう彼女の特性なので諦めている。別に俺は嫌いじゃないけど、周りの大人達が気にする。だから、俺としても色々言わなければならない。面倒な立場である。


「俺は、お前の恋人でも友達でもねぇんだけどなぁ」

「堅苦しいこと言わないで。さっさと質問に答えて。ジェシー」

「さぁ、どうかね? それを俺に聞かれても分からんがな」


 ベッキーはかなり勘が鋭い。本質的に理解している訳ではないけれど、彼女は何かを感じる力がある。けれど、そんな彼女に正解を与える訳にはいかない。

 俺だってさっき確信したばかりだし、どんな理由があってもここに通う学生達を巻き込みたくはないから。


「むにゃむにゃ……」

「すやすや」


 髪を真っ青に染めたシャオとメイが魔力を使い過ぎてお互いに背を任せながら、座ったまま眠っていた。


(ただ密接にあいつと関わる機会があるこいつらには、一つ言っておかねぇとな)


「あいつの中にあるのが、本当にタミ自身の力であるかどうかは……ともかくとして。今のあいつはかなりヤベェ気がする。何か危険なことに巻き込まれたりしたら、その兆候があったとしたら……すぐに俺を呼んでくれ」

「呼ぶ? こんなに広い所で先生を呼ぶんですか?」

「フッフッ、この国にいるならどこでも呼べる手段があるんだぜ。今からそれを教えてしんぜよう。まず――」

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