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―学校 昼―

 一歩踏み出した途端にツタが木の上から伸びてきて、僕の体にきつくまとわりついてきた。


「あ?」


 僕が身をよじっても、その場で軽く跳んでもツタが離れる気配はなかった。


「見~つ~け~た~ぞ!」


 すると、遠くから怒気を含んだ声で迫ってくる人物が見えた。その人物は、ジェシー教授であった。


「チッ」


 一番関わりたくない相手がよりにもよって現れるとは、思わず舌打ちをしてしまった。幸い、舌打ちをした時はまだ遠くに彼がいたので気付かなかったようだが。


「サボりは許されねぇ! 学費を何だと思ってやがる!」


 そう言って、彼は僕の目の前に立った。この距離だ、下手なことをしないようにしなければ。気を引き締めて、僕は彼を見据える。


「何をどうしようと僕の勝手じゃないですか……学ぶ価値がないと判断したから、ここにいるだけの話。それをするくらいの自由は、ここの学生達にはあるはずですが」


 電話越しに学長から、この学校についてのことは軽くだが教えて貰ったことを思い出す。自由と個性を尊重し、学びを選択するのは学生自身であると。僕が必要としないと判断したのだから、それでいいはずだ。いざとなれば、学長にどうにでもして貰える訳だし。


「気にかけて貰える内が華だと思え! 勘違い馬鹿が。俺はなぁ、お前に話す用事があるから探してたんだよ。なのに、サボってやがるから……俺の時間がなくなっちまったじゃねぇかよ!? あぁ!? どうしてくれんだよ、このすっとこどっこい野郎がよ!?」

「用事? 何ですか、それは」

「……まずはすみませんでした、だろうが」

「は?」


(何故、僕が謝らなくてはならないんだ? くだらない。ただの教師の身分で、この僕に謝罪を求めるなど愚かなことだ)


「……あ゛~っ、もういい! クソが……俺に全権ありゃこんな奴、即刻外してやれるのによぉ。クソムカつく」

「何から外すんですか? 用事を済ませたいのなら、さっさと話したらどうですか?」

「どうすりゃあ、そんなに火に油を注ぐような発言が次から次へと出来るんだろうな? 一周回って清々しいなぁ」

 

 彼は眉をピクピクさせながら、引きつった笑みを浮かべる。


「用事、ないんですか?」

「あるよ! は~……面倒だな。いいか? お前はタレンタム・フェスティバルの選抜者なんだよ。滅茶苦茶名誉あることだぞ、自覚しろ。十五時に広場にちゃんと来なかったら、ツルでその首絞めてやるからな。この俺の授業までサボったら、マジで許さねぇ。分かったな? じゃあな、サボんなよ……ったく、最近の若い奴は……」


 ブツブツと小言を言いながら、彼はイライラを滲ませ背を向けて去っていった。すると、僕の体を縛っていたツルも解けて、木に戻っていった。


(そうか……教授がやったのか。自然を操るとは、やはり油断ならないな。あの人のことをより分析する為にも、十五時からの授業には出るか)

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