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鎖を断ち切るのは

―? ?―

 自然の心地良さを感じながら目を閉じたのに、急にそれがなくなったことに気が付いて目を開けると、辺りの景色は一変していた。灰色の淀んだ空間、見ているだけで吐き気のしてくる場所。それは、ここが夢、あるいはそれに近い場所であることの証明だった。

 そして、目の前には鎖に吊るされた傷だらけの幼い少年――幼少期の僕がいた。彼は酷く憔悴し切った様子で、だらんと吊るされるがままの状態だった。最後に声を聞いたのは、ピーターさんがあの魔法陣を使った時だったと思う。

 

 そして、自身の存在に気付かれるのを待っていたかのように、彼は口を開いた。


「……思い出せ、お前が王だということを」


「……忘れるな、お前自身が沢山の人々に愛され必要とされていることを」


「……惑わされるな、自分を信じろ」


「もう時間がない。もうじき、僕は……もうじき力に飲み込まれるだろう。これは、忠告だ。最初で最後のっ……」


 彼は、苦しそうに顔を歪める。よく見ると鎖に縛られている部分の手足は、紫色に侵蝕されていた。あまり感じないが、もしかしたらこの力は――。


「この鎖を断ち切るのは……他の誰でもない、お前自身だっ!」


 そう最後の力をふり絞るように彼が叫んだ途端、侵蝕されていた部分から紫色の力が待っていたと言わんばかりに飛び出し、彼も僕も飲み込んだ。

 飲み込まれる瞬間に確信した。この力は、アーリヤ様のものだと。

***

―学校 昼―

 目を覚ますと、溜まっていた疲れはなくなっていた。それどころか力が満ち溢れ、今までにないほど元気を持て余していた。

 加えて、眠る前まで感じていた胸を刺すような痛みも消え去っていた。


「んーっ!」


 質のいい睡眠が取れた時のような、またはそれ以上。体が軽く、今にも天を翔けていけそうなくらいだ。僕はしっかりと伸びをして、楽になった体で立ち上がる。

 そして、先ほど見た夢の光景を考えた。


(どうして、今までのように問いかける方法ではなく、夢を見せるような形で直接語りかけてきたんだろう?)


 彼は一方的に言うだけ言って、こちらの問いかけにはほとんど答えようとはしないタイプだ。今回も、僕に言うだけ言って消えてしまった。

 しかし、ただ言うだけなら今までと同じで良かったはずだ。何故、わざわざそんな形を取ったのだろう。


(何かそうでもしないといけない理由があったのか? そういえば、あの鎖にあの力……アーリヤ様が関係している?)


 夢での出来事は、さっきの今のことであるはずなのにあまり鮮明には残っていなかった。目覚めた衝撃で忘れてしまったかのような。


(何か色々と長ったらしく言われたような気がするんだけど。思い出せ……忘れるな、惑わされるな……? 時間がない、断ち切る?)


 断片的な言葉なら、やんわりと思い出せるのだが。全容はぼんやりとしていて、言われれば思い出せそうなのにという感じだった。


(まぁ、別に気にする必要はないか。僕が考えるべきは……アーリヤ様のことだけなのだから)


 僕は気持ちを切り替え、利用出来そうな人物を探して足を一歩踏み出した。

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