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憩いの場

―学校 朝―

 僕は校舎を出て、静かな場所を探した。校舎周辺は人も多く、かなり活気に満ちていた。視界に入る人、皆学校生活を満喫した表情を浮かべている。


「次の授業、マジめんどくさ~」

「寝てたからノート取ってねぇ!」

「ヤバイ、間に合わないわ!」


 気だるげに頭を掻く人、眠たそうに欠伸をしながら歩く人、忙しなく走る人……それぞれの形で学校生活を送っている。


(ここが、いずれアーリヤ様の理想の場所になるのか……そうなれば、こんな表情を浮かべる人はいなくなる)


 充実した学校生活を送れるのは、安定した場所と一定の豊かさがあるから。そして、学生達にもそれなりの意欲があるから。僕は、それらを壊さなくてはならない。


(だが……まずは寝るか。集中力が持たない。寝不足と急激な疲れで、あまり考えられない。元から考えることが苦手なのに、これでは駄目だ)


 僕は満喫する学生達を後目に、人の少ない場所を目指してただひたすらに歩き続けた。


(眠い……痛い、疲れた)


 気が緩んだのか、どっと疲れが出た。胸痛だけでなく頭痛、目まいが僕を襲う。


(……いい感じに休めそうな場所はないか? もう、遠くまではキツイ。どうして、ここまでのことになっているんだろう?)


 リアムさんのせいで体は確実に傷付いたが、ここまでになるほどではなかったはず。となれば、徹夜したことが主な原因なのだろうか。

 しかし、たった一日の徹夜が原因でここまでのことになったのは記憶にはない。


(胸の痛みと何か関係しているのだろうか? 嗚呼、駄目だ。全然分からない。とにかく、どこかで横に……)


 少しして、ようやく人通りも少なく開けた場所に出てきた。建物も少なく、緑の地面がよく見通せた。日の光にも照らされ、日向ぼっこにもちょうどいいように思えた。

 ちょっとした憩いの場的なものなのか、緩やかな傾斜になっている。即ち、丘だ。丘の頂点には、どっしりと不自然に大きな木が構えていた。その葉の色は独特で、青と赤の葉がそれぞれ入り交じっていた。


(人もいないし、あの木にもたれかかって寝るか……)


 余力を使い、僕はその丘をゆっくりと登った。


「はぁ……はぁ……」


 こんな緩やかな傾斜すらまともに登れないくらい、僕の体は悲鳴を上げていた。まるで、険しい山道を歩いている時のようであった。


「……よいしょ、っと」


 その丘も何とか登り切り、僕は木に寄りかかるようにして腰を下ろした。


(何だろう? この木の下にいると凄く落ち着く……まるで、母上が傍にいるような――)


 そして、僕は目を瞑り、ゆっくりと夢の世界に身を委ねた。

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