怒りの爆発
―学校 早朝―
「――っ、く!」
瞬間移動を使って学校に辿り着いた瞬間、昨日のような心臓を貫かれるような痛みが走った。学校を出ると消え、入ると感じる痛み。これは、偶然ではない気がしてならない。
(まさか、学校にいる間はずっとこうなのか? 麻痺するまで我慢し続けろと? 何故だ? この痛みは僕だけが……?)
胸を押さえながら周囲を見ると、他の学生達は平然とした様子で歩いていた。苦しさを隠している素振りもない。早朝ということもあってか、少し眠そうな人が多いように見えるが。
(また意識を逸らすしかなさそうだな……疲れるけど、仕方ない)
今の所、学校にいる状態で痛みを消す方法が見当たらない。僕は先日したように、意識を痛みから逸らそうとした。
その時であった、背後から地鳴りにも等しい音が迫って来ているのが聞こえたのは。何事かと思い、振り返ると――。
「タァァァアアアミィィイイイイイイイイッ!」
地鳴りにも等しい音は、こちらに向かって砂ぼこりを立てながら走って来る一人の男性だった。両手を高らかに上げて、満面の笑みで迫っていた。
「は……?」
逃げなければいけない、そう思ったのだが体は動かなかった。
「ひぃぃさぁぁしぶりぃぃぃっ!」
そうこうする間もなく、彼は勢いを緩めるどころか、さらに加速させていく。名前も顔も分からない金髪の男性が、こちらに迷うことなく突き進んでくる恐怖が分かるだろうか。しかも、屈託のない満面の笑みだ。
「ちょ、あぶなぁわっが!?」
「おはよぉぉぉおっ!」
結果として僕と彼は正面からぶつかり、そのままの勢いで僕の背後にあった学校の壁に激突した。人は突然のことになると体が動かなくなると言うが、それを身を持って理解した。
「あ゛あ゛……」
激突した衝撃で、僕は意識を失うか失わないかギリギリの所を彷徨いかけた。だが、僕の上にいる彼が何度も僕を揺さぶるものだから、それは避けられた。
「会いたかったよぉぉお!」
僕が痛みを全て吸収したお陰か、彼は僕の上でピンピンしている。誰のせいで、僕はこんな目に遭っていると思っているのか。
「すっごく寂しかったんだよ!? タミがいないと、俺死んじゃう! 依存症かな、でもそれでもいいんだ。ねぇねぇ、一緒に授業受けよう!」
「はぇ? あぁ……」
かなりクラクラして吐きそうだ。後、全身に満遍なく痛みが広がっているせいか立ち上がれる気がしない。例え、彼が僕の上から降りたとしても。
「あれ? タミ? どうしたの? すっごく苦しそうだよ?」
彼は自分が何をしたのか分かっていないようだ。それを聞いて、沸々と怒りが込み上げてきた。誰のせいで壁にぶつかり、誰のせいで吐き気に襲われ、誰のせいで全身に満遍なく痛みに襲われているのか。
「き……」
「え?」
「君のせいだろおぉぉっ!?」
その怒りは、爆発した。




