表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/768

叛逆の偽り者

―アシュレイ 森 昼―

(大丈夫だろうか……)


 捜査の為、訪れたレイヴンの森のとある場所に向かって歩み続ける。考えないようにはしても、自然と懐かしい気持ちになってくる。ここは、忘れ去られた私の――。


「おい! 見つけたぞ。勝手な行動は慎め、我々は自然鑑賞に来た訳じゃないんだ」


 背後から、苛立ちを隠し切れない先輩の声が聞こえた。


(よし)


 捜査は、私一人で来た訳ではない。私の上司であるモニカ先輩と一緒に来た。私はその先輩を置いて、一人でずかずかと勝手に歩いていた。

 でも、先輩なら必ず私を追ってここまで来てくれると信じていた。何だかんだ言って、こんな私を後輩として見てくれているのだから。


「先輩、さっき何か音がしませんでした? こっち、こっちです」


 先輩がこちらに向かって来る足音が聞こえた、もっと歩く速度を上げなくては。ここで追いつかれて、手を掴まれて無理矢理引きずり戻されたら困る。


「何を言っている? そんな音、聞こえなかったぞ」

「いいや、聞こえました。ほらほら、こっちです」


 そして、見えてきた。目的の場所が。


「はぁ、せめて報告してから行動して欲しいものだな。勝手にあっちこっち行かれたら、こっちが困るんだ」

「すみません、すぐに行かないとって思って」


(確か、この木で……)


 私は、とある一本の木を見上げた。


「……先輩っ! 大変です!」


 台本通り、予定通り、想定通りに私は慌ててその木の上を指差した。


「何? っ、これは……!?」


 その状況から、何かあると察してくれた先輩は私の隣まで走ってきた。そして、驚愕の声を上げた。


「だから言ったじゃないですか、何か音がしたって」


 その木の上には、傷だらけの鳥族の男と麗しい異国のレディが引っかかっていた。男の方は体に無数の黒い物が突き刺さり、その傷口からは血が滴り落ちている。一方のレディは、ただ意識を失っているだけのようだ。良かった。


(レディに少しでも傷がついていたら……あいつらをシメないとね)


「このままでは、男の方が死ぬ! とりあえず、先に男の方を下ろすぞ」

「え? 男が先ですか?」

「当たり前だろ! 手を貸せ、急ぐぞ!」


(嗚呼……だよねぇ。レディを少しとはいえ、木の上に放置するなんて心が痛むなぁ。でもまぁ、仕方ない。やるか)


 今この状況で私が何をすべきなのか、詳しく言われなくとも分かった。収めていた翼を広げ地面を蹴り、宙に浮いた。そして、枝と枝の間に挟まった男を抱きかかえ、素早く着地した。

 

「酷い傷だな。体のあちらこちらに刺さっているこれは……カラスの羽か。可哀想に。急いで治療しよう」


 先輩は気の毒そうな表情を浮かべ、鳥族の男に手をかざした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ