表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/768

板挟み

―マフィア拠点 朝―

「……くだらん」


 父上ならば、ロイさんの行動に対してこう述べただろう。彼の立場は実質的な立場ではトップ、だが実際は彼は真ん中で板挟み状態。

 アレンさんに対して、文句も言えないくらいに立場に差がある。僕は何も知らないから、彼を馬鹿にするような一言は言うべきではないかもしれない。けれど、父上は陰で態度を変えるのを良しとはしない。だから、僕は申し訳なさをやや感じながらもその言葉を発したのだ。


「なん、だとぉ!?」


 想定通り、彼は怒りでいっぱいの顔をさらに歪ませる。


「ぼ……わ、私はお前のような人間が一番嫌いだ。後から露骨に態度を変えるなど、仮にも組織的に頂点に立つ者だろう。お前にはその自覚がないのか?」


(危ない、僕って言ってしまう所だった)


「はぁ? 調子に乗ってんじゃねぇぞ!?」

「乗ったつもりはないのだが」


 父上はこういう人だ。自分が選ばれ優れた人間だからこそ、そうでない人の立場が本気で分かっていない。寄り添おうとはしている、けれど本当に出来る人に出来ない人の気持ちなど分からないものだ。


「……舐め腐りやがって。私はおめぇを認めねぇからな」


 彼は魔法を使って、ふわりとその場に立った。片腕を骨折しているから、自力で立つのが少し難しいのだろう。


「急に私より上の立場になるなど認められるものか! てめぇの商品価値など知ったことか! お前の下に下るなど、プライドが許さねえ! こんな体でなければ……直接ぶっ殺してやったのになぁ!」


(ロイさんに、そこまで恨まれるようなことを僕はやってしまったのか……う~ん、分からないなぁ)


 ロイさんの顔をどれだけ見ても思い出せないのだが、彼の名前に敬称をつけることには何故か違和感を感じる。敬称をつけるほどの人間ではないと、直感的に訴えてくる。

 けれど、その絶対的な根拠がない。理由もない行動は父上が最も嫌う行為、真似をするなら今は避けるべきだろう。


「……フン」

「何だ? 何がおかしい!?」

「私にすら触れられないと言うのに……よくそんな大口が叩けたものだ。直接的だろうが間接的だろうが……お前程度の思うようにはならない。足ふきマット……だったか? そんな物にすらしたくない。お前を踏む労力も時間も勿体ない」


 どうして、彼は僕に触れられなかったのだろう。アレンさんは「ゴミからは俺達に触れられない」と言っていた。

 つまり、僕からは彼に触れることは可能だが、ロイさんからは出来ないということ。触れようとすると、先ほどのように紫色の壁に防がれてしまう。

 しかし、僕はあれを意識的に出した訳ではない。勝手に発生したのだ。


「……目障りだ、消えろ」


 これ以上、彼と話しても何も得られない。それに、ずっと真似し続けるのも疲れる。僕がそう言うと、彼は歯ぎしりをしながら僕の横を通り過ぎた。


「ぶっ殺す」


 最後にそれだけ呟いて、彼は玄関から出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ