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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十三章 邪悪な手
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必然を運命に

―取調室 昼―

(この人は、さっきの人と同じ警察? 同じスーツを着ているし。ただ、恐ろしいくらい仲が悪いみたいだ。それにこの人、カラスって……)


 この国では珍しい黒髪を堂々とさらけ出している辺り、比喩的な悪口ではないようだ。目の前にいる人物は、本当にカラスで何らかの事情で警察という組織にいる、そう考えるのが妥当であるように感じた。


「何かな? ジロジロ見て。レディなら大歓迎だけど、男の君に見つめられても精神的に苦痛だよ。まぁ、今は文句を言ってる暇はないか。おめでとう、巽」


 発せられるはずのない名前、それが目の前の知らぬ人物が言った。その衝撃と動揺は、未熟な僕には隠し切れるものではなかった。


「どうして僕の名を!?」

「そんなリアクション、前にもしたよね? 再放送は勘弁だよ」

「え?」


 この国で、僕はこの人に会ったことがあるらしい。しかも、本来なら知るはずもない僕の本名を把握している。警察という組織は、王にも繋がりがあるということだろうか。でなければ、かなりの情報流出だ。


「……妙だな。まぁ、いいか。私らにとっては些細な問題。さて、どうして君の名を知っているかということだが……今は教えられないね」


怪訝そうな表情を一瞬浮かべたものの、それは大したことではないとすぐに余裕そうな表情に切り替えた。そして、人差し指を自身の唇に当てて小さく微笑んだ。


「何故? 知られている側としては、それくらい知る権利があるはずです。貴方達が正当な手段で、それを把握しているのならば」


 もしも、目の前の人物が普通でないとしたら――そう考えるだけで気持ちが焦った。機密にも等しい情報を知られているなど最悪だ。

 だから、知りたい。目の前の人物が、どんな存在であるのか。


「フフ、なんだ。まだそんな口が利ける元気があるんじゃないか、さっきまでの死んだ顔が嘘みたいだよ。ちょっとだけ安心した。で、何故教えられないかと言うとだね、ここを出れば分かることだからさ」


 しかし、この人は今言うつもり一切ないらしい。


「……ややこしいです。教えられるなら今教えて下さい」

「君は知りたがりだね? 待つことが出来ないタイプかい? 何度でも言うけど、ここから出ればすぐに君は理解する。私の立場も、何故君の名を私が知っているかも……ね」


 前髪を掻き上げ、僕を見下ろしながら怪しく微笑んだ。


(ここから出なければ……分からないというのか。けど、ここから出ても僕には居場所はない。でも、ここで色々突きとめなければ国にも迷惑がかかるかもしれない……くそっ)


「分かりました……ここから出れば分かるんですね? すぐに」

「うん」

「なら、行きます」

「外に連れてってくれる人がいるからね、ちゃんと一緒に行くんだよ」


 僕は立ち上がり、ドアに向かって歩いた。そして、ドアを開き外に出た瞬間だった。


「……運命的な出会いには演出が必要さ、それが必然なら尚更。すぐにとは言ったが、君の思うすぐとは少し違うかもしれない。だが、今日中には必ず……出会える」


 ドアが閉まる直前、そう聞こえた。その声色は明るくも、どこか悲しそうにも聞こえた。


「行くぞ、ついて来い」


 ただ、それを確認する間もなかった。あまり不審な動きをしていては、この案内係に怪しまれるであろう。致し方なく、案内係に従って僕は取調室の前から離れた。

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