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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十一章 失われた思い出と新たな思い出
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人ならざるもの

―レストラン二階 夜中―

「うぅう……」


(まただ、また聞こえる)


 そのうめき声が聞こえてこないよう、僕は掛け布団を深く被り耳を塞いだ。


「うぅ……」


 しかし、それはほとんど意味をなさない。とっくに理解しているのに、何かをしなければ無防備な状態を誰か見られているような気がして嫌だった。

 そして、その誰かが誰なのか――未だに分からない。いや、分かることなど出来ないのかもしれない。見えないものを見ることは不可能なのだから。

 正体は分からずとも、その何者かがあまり良くないものであるのは流石に察していた。僕の体調があの日以来悪いのも、この変な声も……人ならざるもののせいであると。


(僕が一体何をしたって言うんだ!?)


 理由が分からなければ、これはただの理不尽だ。僕のまとっている負のオーラが、幽霊を寄せつけてしまったのだろうか。

 残念ながら、僕に霊感はない。日常生活において、その気配を感じ取ったこともない。しかし、そんなものを超越するくらいの存在感を奴は放っている。

 いや、気付かせようとしているのかもしれない。自分はここにいるのだと。


(眠れない……)


 恐怖と不安のせいで、眠気がすっかり枯れ果てた。その眠気を再び得ようと目を閉じても、ずっしりと重たい体と突き刺すような頭痛でそれすらも叶わなかった。


(ますます事態は悪化しているし)


 僕だけでは不甲斐ないと感じたのか、ついに幽霊はその存在を心優しい老夫婦にも示すようになった。僕の体を使って。

 夜、僕は窓枠に腰掛けて遠く見ていたらしい。もし、無理矢理引きずり降ろさなければどうなっていたかも分からないと。

 

(僕を殺す気なのか? なんで……?)


 出て行けという要求から、かなりレベルアップしたように思う。僕が何をしたのだろう。この国で、そんなに恨まれることをしたのだろうか。この国での記憶が曖昧過ぎて分からない。この国に来る前であれば、いくらか思い当たる節はある。恨まれても仕方がないことを何度かやらかしたのだ。


(もしかしたら、曖昧な中でやらかしたのかもしれないけど……理由が分からなければ、僕はどうすることも出来ないよなぁ)


 霊障を体感するのは、今回含めて二度目。一度目の方が、自己主張の表現が上手だった。僕の体を乗っ取り、僕のフリをして他者に気持ちをぶつけていた。それくらい上手であってくれたなら……と思いもするが、あれはあれで大変だ。


(幽霊経験浅いのかな? なんて……僕はこんな時に何を考えているんだろう?)


 結局、この日僕は眠ることは出来なかった。

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