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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第十一章 失われた思い出と新たな思い出
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真っ赤な水分

―クロエ ? 早朝―

「――やっと、やっと出来た!」


 目の前のモニターには、苦しみながら横たわる巽君の姿がしっかりと映されている。およそ一日かけ、徹夜をして何とかやり切った。

 奇跡的に誰も来ず、作業に集中することが出来た。ただ、その分疲れは大きい。


「後は、これをこーして……消す!」


(消すのは慣れたなぁ)


 最後の仕上げ、それは捏造した映像全ての日時を加えること。実はモニターに映し出されている映像には日付と時間がしっかりと右下に記されている。しかし、私が入れ替えたばかりの映像にはそれがない。これでは、バレバレだ。

 そんな時に役に立つのがそう、魔力が使われたという証拠を残さずに変えられるのが、クリスティーナの考えたシステム介入型魔術だ。


(ここさえ変えることが出来れば……!)


 私は、モニターの画面に触れる。変えたいと思う所に触れ、捏造したい映像をイメージする。しかし、それだけではただの想像だ。これ――指輪がなければ。

 この指輪は、アクセサリーとしての指輪と何ら変わりない。赤いルビーみたいなのが中央にある、可愛くて綺麗な指輪。光に当てればキラキラと輝く。


(ほんと、スパイ映画さながらね。絶対、それ見て感化されてこの形にしたとしか思えない。悪用されるとか何たら言ってたけど、だったらこの形変えるべきだわ。まぁ、現に悪用しちゃってる訳だけど)


「形を変えよ! 私の望む姿へと!」


 そして、これが指輪の不思議な仕組みが起動する呪文。すると、赤い光が日付や時間がある部分に降り注ぐ。それと同時にモニターに刻まれた文字が、私の望んだものに変わる。


(これで……本当に出来たんだ)


 流石に、この指輪の詳細は教えて貰えなかった。「信用してるしてないとかじゃなくて、これだけは無理! 色々詰まってるから! ごめん!」と申し訳なさそうに言われた。


(ただ想像するだけだって思ってたけど、まさかここまで難しいとは。復元魔法並の集中力に、瞬間移動並に消費する魔力……私がどこにでもいるただのカラスだったら死んでたね)


 あまり成功しないのは、多分それのせいだろう。デメリットが大きいと失敗の確率は上がるものだ。


(ヤバいヤバい……水分補給水分補給ってね)


 やり切ったという達成感と、どっと押し寄せた疲労感に倒れてしまいそうになった。ちょくちょく補給はしていたのだけれど、それでも間に合ってはいなかったようだ。

 こうなることも想定して、大きいペットボトル五本分用意していたのに。もう、一本の半分しか残ってない。私が生きる為に必要な真っ赤な水分――血液が。


(巽君にお酒だと勘違いされたっけ。馬鹿だよねぇ、それよりずっとヤバい奴だよ)


「頂きま~……す」


 私は流し込むようにして、全て飲み干した。

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