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哀れな人生

―? 街 夕方―

 何故だろう。体が重い。そして、頭も痛い。これは、眠過ぎてすぐにベットにダイブしたくなる時の症状と似ている。でも、寝不足だった覚えはないし、そもそもこんな大事な時に眠たくなどなるものか。


(くそ……)


 身を潜め、息を潜め、こっそりと彼を追跡する。それが私の役目だから。そんな大事な役目を果たしてる最中に、この眠気はおかしい。意識が朦朧として、目を瞑れば立ったままでも眠れてしまいそう。

 そんな眠気に耐えながら、私は歩き続けている。あのレストランからどれほど歩いただろう。少し前を歩く彼は、人気のない路地裏を足早に歩く。いつもはこんなではない。まるで、嫌がらせだ。一体、彼はどこに向かっているのか。いつもは学校か、家、もしくは骨董品屋。その三つしか行かない変な男。それなのに、今日はそれらの所に行くルートではない道を通っている。


(歩くのは疲れる……かと言って、飛ぶのも明るい今は危険。どうしたんだろ、私)


 瞼が重い。まるで、下から力強く引っ張られているかのように閉じてしまう。閉じたら意識が遠のきかけるから、その度に目を大きく開いて耐え続けている。


(マジでどこ行くつもり?)


 監視対象者が曲がり角の向こうに消えた。曲がり角は、少々困る。距離感の把握とか、位置とか掴みにくくなるから今よりももっと慎重に行かなくてはならない。歩くスピードを落として、彼の後を追おうと角を曲がった時だった。


「しぶといな、君も」

「ひっ!」


 曲がってすぐ、目の前には私達の監視対象者が冷たい目でこちらを見下ろしていた。私は驚いて、思わずその場に尻餅を着いて倒れた。


「執念って奴かな」


(バレてた……の?)


 とんでもないミスだ。ミス? そんな簡単な言葉で片付けられることではない。最悪、ボスに始末されかれない失態だ。


「あのレストランで眠って欲しかったんだけど……上手くいかなかったみたいだね。じゃあ仕方ないよね。さっさと君を片付ける」


 瞬間、彼の左目が黄色く変わっていく。浸蝕されるように、ゆっくりと左目の色が黒から黄色へ変わっていく。その言葉では言い表し難い美しさに、私は惹かれた。


「何が面白いのかな? 君って気持ち悪いな。人につきまとって、挙句それが見抜かれたのにその笑顔。しかも、その笑顔がさらに気持ち悪い。しかも、君ってまだ子供だよね。子供でこんなことして、気味の悪い笑顔を浮かべる……何がしたいのか全然分からないけど、こんな悪趣味なことやめた方がいいよ。って、命令されている側の君に言っても仕方がないんだろうけどね。哀れな人生――」


 彼が長々と述べていく中、私の意識は徐々に闇へと誘われていった。

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