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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
十章 悪魔の囁き
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幼心を思い出す

―クロエ ? 夕方―

 自室に向かう前に、広間のスケジュール表が目に入った。なので、先にこっちを済ませることにした。そのボスのスケジュール表は白い紙がベースだということを忘れるくらい、文字がびっしりと書かれていた。文字も小さく、最低限のことしか書かれていないのに、この量。


「常人では、とてもこのスケジュールをこなすのは無理ね」


 それを見て、つい思ったことを口から出してしまった。夕方は、ほとんどのメンバーが仕事をしているということもあって、広間には誰もいない。お陰で助かった。誰も気にしないスケジュール表を見ても、独り言を呟いても怪しまれないのだから。

 現在、ここにいるのは私とエトワールくらいのものだろう。ここは、大人も子供も性別も関係ない。重要視されるのは実力だけ。それぞれの実力に合った仕事が腐るほどある。皆忙しい。だから、私みたいに学校に行ける人は少ない。私の場合は、それが仕事だったから通うことになっただけなのだ。ちょっとした巡り合わせに過ぎない。


(こんなにもぎっしりなのに……昨日は帰って来たのか。多分、これは最新の情報じゃない。訂正とかは一切されていないみたい。う~ん、これを過信するのは良くないな)


 ボスは、色々な名前があって色々な仕事をしている。それぞれの顔を使い分け、バレることなくやってきた。ボスは、まるでカメレオン。この過密スケジュールの中で、使い分けている顔が混ざったりしないのが凄い。

 そんなボスをサポートしているのが、性別も名前も不明の屈強な人。着ている服や仕草、行動は女性だけど……見た目は明らかな男性。組織の六番目で、アマータという役職についている。ボスのマネジメントをするのが仕事だと自己紹介されたのが、今でも鮮明に思い出せる。しかし、名前は言わなかった。幼心に不思議に思ったものだ。そして、時が流れた今もその人の名前を知らないし、他の誰も本名で呼ばない。何故なのだろう。


(アマータに予定の変更を聞ければいいけれど、聞く動機がないもんなぁ。う~ん、無理。まぁ、避けるべき時間帯は夜とか夜中……朝もか? お昼前くらいだったら、いいくらいかな。一番仕事する時間だよね)


 私はスケジュール表で、最も予定が詰まっている所を探す。最も黒くて文字も多くて、文字が小さい日を。正直、似たり寄ったりだ。それでも、私はそれらを見比べて決行に最適な日を探した。


(明後日以降で予定ぎっしりで、ボスが帰って来ない可能性が高い日は……明々後日? 朝から昼だけでどんだけ仕事あるんだろ、これ。文字小さっ! よく書いたな……)


 そして、見た感じで私はその日を見つけ出した。これを書いているのは、確かアマータだったはずだ。見た目に反して、達筆な文字を書くものだ。


(とにかく……明々後日がちょうどいいみたいね。分からないけど。流石にこの仕事量で変更とかあったら、色々支障出て来るだろうし。うん、賭けよう。この日に!)


 何故だろう、少しワクワクしている。自分でもよく分からない。ただ、この気持ちを上手く説明するとするならば……子供が大人に初めて悪戯をする時のそれだ。言いつけを破って、ちょっとだけ悪いことをする時の気持ちとよく似ている。

 私がやろうとしていることは、そんなレベルじゃないけれど。懐かしい――そんな気持ちを抑えられぬまま、私は今度こそ自室へと向かった。

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