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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
十章 悪魔の囁き
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いつもと違うような気がするだけ

―クロエ ? 夜―

「確かめて欲しい情報?」

「うん」

「何故だ?」


 エトワールが疑問に思うのも無理はない。私は生まれて初めて、彼に依頼をしたのだ。そんなに情報が必要になることもなかったし、そんなたいそうな情報を持った人物との関わりもなかったから。その私が、突然の依頼。何事かと色々勘繰っているに違いない。


「……この私にしつこい奴のがいるの。もしかしたら、何か察知されたのかもしれない。そんなヘマをやった覚えはないけど、可能性も捨てきれない。だから、調べて欲しい。その辺の類は、あんたが得意でしょ。奴が何者なのか、詳細に調べて欲しいの」


 この質問をされることは、察していた。事前にそれに対する答えを用意して、エトワールを探したのだ。だから、私は彼を真っ直ぐ見つめたまま答えることが出来た。


「へぇ~だとすれば、クロエ。それは、中々の失態ではありませんか? ()()()()されてしまいますね」


 ヴィンスは、にやりと頬を歪ませる。


「やめろ、縁起でもない」


 エトワールは、強い口調で言った。


(お仕置きで済むなら、そっちの方がマシな気がする)


 ただ、お仕置きはお仕置きで恐ろしいのも事実だ。組織の運営に支障をきたすような失態をやってしまった時、それが行われる。老若男女問わず、ボスが直接手を下す。それが致命傷になって、今まで大勢の人が命を落としたのも見てきた。

 ゴミは捨てなくてはならない――ボスが言っていたのを思い出した。ボスは、私達を使えるか使えないかでしか見ていないのだ。分かっている、そんなこと。その非道さと冷酷さが、私達の組織をここまで大きくさせた、それもまた事実。でなければ、とっくにこの組織は終わっていただろう。


「エトワールは、クロエが傷付くのを見るのが嫌なのですか?」


 どうしてそんなことを言うの? みたいな表情でヴィンスは問いかける。つまり、こいつは私が傷付くのがみたいということ。とんだ変態糞野郎だ。どんな教育を受けたらこんな奴が出来上がるのか。昔から疑問に思っていたことだ。こいつは、私が組織に来た時からいた奴だが幼い頃からそんな感じだった。だから、嫌いだ。


「……当たり前だ。ヴィンス……勿論、お前にも傷付いて欲しくない。俺はこの組織にいる全員に傷付いて……くっ」

「どうかしたの?」


 エトワールの話が、不自然にとまったことに違和感を覚えた。唇でも噛んでしまったのだろうか。


「いや……気にするな。俺は甘いのかもしれんな。いずれ……筋書き通りに……いや、すまない。クロエ、お前の依頼は受けよう。ちょうど退屈していたんだ。腕が鈍ってしまうんじゃないかとヒヤヒヤしていた」

「そ、そう? ありがとう」


(今日のエトワールは何か変だけど、まぁ、やってくれるならいいか)


 もう一人の方はムカつくほど通常運転で、余計に腹が立つ。その歪んだ笑みに沿って口を切り裂いてやりたいくらい。


「あぁ……」

「フフフッ♪」


(マジでキモイなこいつ)


 腹が立っているせいか、いつにも増してヴィンスの笑顔がキモイと思った。何というか、獲物を狙う奴の目で見られている感じがする。


「じゃあ、私行くから」


 鳥肌が立つので、二人に背を向けて足早にここを後にした。




前作の番外編の後、今作の始まる前くらいの時系列の作品を投稿しましたので、ぜひ見て下さいhttps://ncode.syosetu.com/n2688ey/

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