いっそ消えてしまいたい
―? ?―
これが、僕への罰なのか。
「あ゛あ゛あ゛う゛う゛っ!」
これが、報いなのか。
「●■●△▲■☆~♪」
犯した罪が多過ぎて、償うべき罪があり過ぎて、背負うべき罪がでか過ぎるから、こんな目に遭わなければいけないのか。
(誰か……助けてくれ)
しかし、僕はつい誰かに助けを求めてしまう。そんな資格はないのだと、身に染みて理解しているのに。
(もう嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――)
どれほどの時間、僕は苦しみ続けているのだろう。いや、それほど時は過ぎていないかもしれない。今の僕には、この一分一秒が長く、地獄のように続いているから。早く解放されたい……そう願うほど、時はゆっくりと進む。
(……終わりはいつ来る? 終わりなどあるのか? 僕の気持ちが変わるまで……? 分からない、分からない! あの人は、僕をこんな所でこんな歌を聞かせて何がしたいんだ!)
空腹も、渇きもない。これだけ、耐え切れない痛みに対する絶叫をし続けているのに。喉くらい渇いてもいいものだろうに。それに、夜中、彼に出会う前まで魔力の消費に悩んでいたというのに……それがまるで嘘のようだ。
疲れで吹き飛んでしまったのだろうか。それとも、気を失う前に僕の足に落とされた何かの肉――あれを食べさせられたのか。
「ぐぅぅっ! あぁ……!」
痛みに支配されていく思考を、必死に僕は他のことに巡らそうと抗う。そんな中で、僕は思い出した。
(牢屋で過ごした時に似ている……)
かつて、僕は自らの意思で自身の国の牢屋で過ごしたことがある。こんな豪華で部屋のような場所では当然ないが、そこで感じた時のそれに似ている。飢えもなければ、喉の渇きもない。それは、日常生活を送る上で自然と消費される魔力が使われないからだ。
(でも、彼は瞬間移動をここで使った。矛盾している……魔法が使えない訳ではないのか? 試してみたいけど、今は……!)
魔法などが生活の主である国の牢屋では、魔法や魔術を使っても脱獄出来ないようになっている。魔力が無意味と化し、体の自由がないその空間では、自然と体に蓄積されていく。だから、必要なエネルギーが何かを食べなくても十分に得ることが出来るのだ。
(その矛盾が成り立つ場所があるとしたら……)
「い゛あ゛う゛う゛っ……」
しかし、それ以上考えることは難しかった。消えない痛み、続く苦しみ、終わらない歌……もう体は限界を迎えていた。耐えても耐えても、終わりが見えない。耐えることを放棄することも出来ない。耐えるしかない。だが、もう耐える気力もない。
(痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイ!)
いっそ消えてしまいたい。この苦しみから解放されるのなら……そっちの方が楽だ。




