表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
七章 この罪は私のもの
105/768

門前払い

―学校 昼―

「……ってば、タミってば!」


 リアムの声で、ふと現実に呼び戻される。


「あぁ……リアム」


 月曜日の昼、三限目の歴史の授業終わり。もう、隣にリアムがいるのも慣れてきた。当然のように、僕の隣で授業を受けて誰よりも楽しそうである。


「どうしたの? ボーッとして」


 不思議そうな表情を浮かべて、僕に問いかけた。


「色々と考えてて……どうかした?」

「駄目だよー授業はちゃんと聞かないと。ノート真っ白じゃないか。俺のを見せてあげるから、ちゃんと写してよ。もー」


 リアムは呆れ混じりの笑みを浮かべて、しっかりと書かれたノートを僕に差し出した。ノートは丁寧にまとめられていて、僕にも分かりやすかった。先生の書いたことだけでなく、言ったことまであった。選択している授業以外にも、こんなに真面目に取り組むとは大したものだ。


「ありがとう……」

「なんか元気ないね?」

「別に……」


 僕は、自分の気持ちを隠すのが苦手だ。見せようと思っていなくても、いつの間にか出てしまう。きっと、今の僕からは重い空気が出てしまっているのかもしれない。


「別にって。全然そういう風に見ないけどなぁ。あ! もしかして、あの変な怪奇文書のこと考えてた? だったら、そうなるのは納得かなぁ。そうか!」

「え? あ、あぁ……? ん?」


 何を勝手に押し付けているのか。リアムの思考を、僕に当てはめるとこうなってしまうのか。


「あーなるほどね! そうそう、俺、これゲットしたんだ~。見て見て!」


 もはや、リアムに僕の言葉など届きそうもなかった。もう、あの手紙のことを考えていたことにしておこう。そっちの方が、面倒なことが少ないかもしれない。


「これ……その怪奇文書って奴?」


 リアムの手には、僕がばら撒いた手紙が握られていた。僕がばら撒いた手紙、それを怪奇文書とリアムは呼んでいるみたいだった。


「そうだよ! これ……すっごくいいよね! 見た瞬間、感動したよ! 警察の人達は、子供じみたくだらない悪戯で調べるまでもないって言ってたけど……本当にそうなのかなぁ? この文字から伝わってくるよ、ヴォール=アームドって人の思いが」


(子供じみた悪戯……くだらない?)


 僕が必死に書いた文章は、捜査のプロにはそんな風に伝わってしまったのか……そう思うとただただ悲しい。見下して侮辱したのだから、色々言われることは分かっていた。

 しかし、調べる前から門前払いのような感じでは、僕の努力は全て無意味ではないか。悪戯じゃない、くだらない訳がない。


(駄目だ……こんなんじゃ! 手紙に書いたのに! 一度目の失敗は赦すと! なのに、二度目……やっぱり、手紙だけじゃ効果はない。調べてすら貰えないなんて……駄目だ! こんなの!)


「え、ちょっと、これからまだ授業が……タミ!」


 気がついたら、体が勝手に教室を飛び出していた。もう、やるしかないのだと体と心が焦ったからだろうか。それとも、認めさせたいだけなのか。これは、しっかりと考えられた意味のある行為だと。

次回の投稿は、月曜日になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ