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私の名前は、です!

ミリフィナスは『まずは小咲ちゃんの最近の記憶を見せますです!』と、「さん」から「ちゃん」付けに変わっている事に、少し馴れ馴れしな、と小咲は思ったが口には出さず、ミリフィナスが小咲の額に触れ目を瞑る様にと言われ、渋々指示に従い目を瞑る。





『思い出しましたか?』


「……うん、全部…思い出した…」


『今のが、ここに来る前の記憶です。そしてお分かりの通り、白原小咲という身体は…もうありません…』


記憶を思い出し全てを覚った小咲に再度伝える。

少しシリアスに言うミリフィナスは、直ぐにおどけて続ける。


『…でも!可愛い身体に転生して、また生きられるです〜!』


小咲はこの言葉に苛立ちを覚えるが、ミリフィナスに聞きたい事がたくさんあり、それを一つ一つ聞いていく。


「なんで私を転生したの?」


『本来、小咲ちゃんは天寿を全うしてこちらに来る筈だったですー、でもズレが生じてノルン様に許可をもらって転生させたです!』


「ノルンって誰?」


『私の上司です!』


あっそう、と話がずれてしまわぬように小咲は質問を続ける。


「そもそも、なんで私を選んだの?」


『えーと、小咲ちゃんの前世に…さっきの記憶の時代の前の時に、当時はアイナと呼ばれてましたです。その方が来世にも私の加護を与えて欲しいと――』


「――ちょっとちょっと!私の前世はアイナって人なの!?記憶が無いんだけど?」


今は記憶があるのに?と小咲はたずねる。


『記憶は本来、受け継がれ無いです。たまに一部を受け継ぎますが、前世は前世、来世は来世です。』


「そうだけど、私はど――」


『――2つ例外はありますです。たまに一部のと言いましたが、1京魂に1魂の割合で引き継ぐ魂が存在しますです。あとは女神による介入があった場合です。今回はそれに当たりますです!』


1京って…ほぼ無いじゃん、と思っているとミリファナスから捕捉が入る。


『地球上の魂だけでは1000年に1魂ですが、こちらの宇宙全体の現在の生物だと1000魂に1魂ですから多いほ――』


「私達の世界ってそんなに居るの!それだと宇宙には1000京人も居るの!?」

あまりの多さに驚く小咲、話しは脱線しているが少し深く聞いてみる。


『違うです。地球は前まで私の管轄だったですから魂の数は把握してるです。宇宙全体は各々が管理してるですから、生きている生物の魂しか解らないです。ですからその1000倍以上の魂があるです、因みに星にも魂があるです。天寿を全うすると、無条件で高位の神々の仲間入りです!』


へぇ〜、と言いそうになり我に返る。こほんっと咳をしてから先ほどの話しに戻した。


「それで、アイナはなんで加護を?」


『アイナは、長年私達と敵対していたです。亡くなる数年前に敵を裏切り味方になってくれたです……』


敵方と味方、物騒な事しか思い浮かばない。


『…アイナは闇を払う加護を持っていたです、今は亡き…光の女神の加護を、その加護は強力で光の女神さえ亡ぼす力がありましたです。敵方はそれを知ってアイナを捕らえ、女神を亡ぼしましたです』


「でも、最後は味方になったんでしょ?」


『ハイです、ですが光の女神は名前の通り光に力を与えます、加護が無くなる事は世界に闇が訪れるです』


「じゃぁ、今そこは闇で覆われているのね?」


『いいえ、今はまだ大丈夫です…それほど多くは猶予がありませんです』


大丈夫?なんで?と疑問を投げ掛ける。


『それは……アイナが助けてくれたです……』


「アイナが?光の加護を持ってるから?でも私に転生してるんでしょ?……まさか!?」


『その通りです。アイナは、その命と引き換えに光の力を使い……そして力尽き、私に転生を頼んだのです。「もう一度あの地で生きたい」と言って、私は彼女の故郷に転生を試みましたです……ですが………』


あぁそして私か、と小咲は前世の自分を思い、ミリフィナスは頭を下げる。


『ごめんなさいです!あの時は、アイナの願いを叶えたくて!でも私には力が足りなくて……小咲ちゃんに重い枷を……アイナ…ごめんなさいです………』


小咲だった前、アイナという身体の記憶は無いが、いつの間にか小咲の心の中に熱くそして、優しい気持ちが大きくなり、小咲の意志とは違う誰かが言葉を出す。


『『(そら)……ありがとう……』』


『っ!!!』

「!?」


急に出た言葉にふたりが驚き、ミリフィナスは大粒の涙を流し、その声に話しかける。


『…アイちゃん…アイちゃん!ですか!?……天と呼ぶのは貴女だけでしたです!』


だが小咲の口から返事は無い、小咲は反狂乱のミリフィナスをなんとか宥めようと自らの声を出す。


「落ち着いて!今のがアイナの声なの?貴女が私に転生させる前の私なの?」

ミリフィナスは『アイちゃん、アイちゃん…』と泣き止まない、落ち着いて、大丈夫!と、いくら小咲が宥めても泣き続ける。

少し経ち、ミリフィナスが落ち着き出してからおもむろに話を始める。



『……スン…スン……アイナは、私達と同じ世界の人間でしたです……』


同じ世界?と小咲は呟き、ミリフィナスは続ける。


『私も日本……倭国の女神をしていたです。その頃から日本は美しい国でしたです…』


「…倭国?」


『あっ、えーと…弥生時代です、1800年から2600年ほど前です』


中学の歴史の授業で習ったような?と考える。


『アイちゃんは当時巫女として、私達に使えていたです。とても優秀で民からの人望も厚かったです』


「巫女?」


『ハイです。神々の言葉を神託として受け取り、神様の代弁者として国をまとめていたです。当時の名は「卑弥呼」と名乗っていたです』


卑弥呼!?と驚き過ぎて椅子から落ちそうなる小咲、ミリフィナスはさらに続ける。


『ですが卑弥呼はいつ頃かは不明ですが、姿を消しましたです』


「亡くなって、転生したんじゃ?」


『それはあり得ませんです、神託を受け取れる人間を、当時の神々はむやむや死たせたりはしないです、力を使い転生させる筈です。』


でも…と小咲がいい始めるのに合わせてミリフィナスが言葉を被せる。


『…でも、それは出来なかった。卑弥呼は……異世界ラトゥールに転移されていたです……邪神竜によって……それを知ったのは、光の女神が消えた時でしたです…』


「でも、その後で仲間になって、私に……」


『……転生したです。邪神竜を倒せず、四肢封印を施した後に……』


「倒せなかったんだ……」


……ふたりの間に暫く沈黙が流れる。



『……アイちゃんは、今の小咲ちゃんみたいな可愛らし人でした……』


ミリフィナスはアイナの事を語り出す。小咲は黙って聞き手にまわる。


『卑弥呼様、卑弥呼様と慕われていましたが、それは人間の呼び名で、神々は「巫女」や「代司」と呼んでいました。私も最初は神々と同じで……アイちゃんはどちらの呼び方も嫌いでした。ある時、私が彼女に指示を出していると「意味が解らない!この駄目女神!」と言われ私も『黙れ!矮(あい(ちび))の分際で女神を罵倒するな!』と言った事があるんです』


昔から駄目女神だったんだ…


『それから会わなくなり、卑弥呼も消え邪神竜を葬るだめに、私がラトゥールへ行き敵対し仲間になったときアイちゃんはアイナと名乗り出しました。敵対していた時は名乗りもせず「光の悪魔」敵対していた時は名乗りもせず「光の悪魔」と言う通り名があったそうです。私は直接聞いて無いですが他の仲間に「アイナは私の国では(あい)()という字を書くの、女神様から頂いた名よ!」と……私には最後まで「自分で考えた」と言ってましたが……嬉しかったです……申し訳なかったです………スン……』


ミリフィナスがまた泣き出す、だが直ぐに立ち直り何を思い出したのか、笑顔で話す。


『アイちゃんは私にも呼び名をくれたんです!「天照だから(てん)を(そら)て呼ぶわ!いいでしょ?」って、嬉しいかったです!何日もウキウキでしたです!アイちゃんに殴られるまでずっとふわふわしてたです…』


「うん…今の私でも、殴りたい気持ちはわかるかも…」


『そそっそんな〜です!?そっそうだです!小咲ちゃんも新しい名前を付けるです!ラトゥールでは前世の名前は不便です!』


名前?と小咲は悩む、もう前世の身体は無い、今は白猫ミニマム娘だ。悩む小咲は、ふとテーブルの中央にある花へ目線が行く。


「……この花ってなんて名前?」


『ん?この花ですか?地球の花で、「シネラリア」と言うらしいです。ノルン様がくれたです♪』


可愛いですね〜とミリフィナスは言い花を撫でる。小咲は「シネラリア…シネラリ…シネ……」とブツブツ呟いている。

バンッ!とテーブルを叩き「…決めたっ!」と叫び、ビクッ!?と驚くミリフィナスに言い放つ。


「シネラ!シネラにする!」


『ええっ!?安直すぎですよ!もっと可愛い名前にし――』


「――いいの!もう決めたから♪私は……







………さて、そろそろ……』

別世界で小咲達の様子を観ていた女性は、椅子から立ち上がり、ふっと姿を消した……




シネラリアの花言葉は「いつも快活」「喜び」、小咲が生前に求め、願い、失った物だ。

ふたりはこの意味を知らない、だが小咲へ言えるのは、異世界ラトゥールでこの花は「生きる力」と言われる希少な花である。

それを知るのは、もっと先だ……





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