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閑話:英雄とは…

ボルドーのお話し

インデステリア王国公都ガルデア方面軍、聖騎士師団・師団長は、2ヶ月ぶりに公都ガルデア公城にある師団長室で公務を行っていた。



「…して、ボルドー…マリアは元気にやっているか?」


師団長は「緑牛の騎士団」団長のボルドーに訊ねる。


「はい、元気にやっていますよ。」


「……そうか…」


ボルドーは正直に答えるが、師団長は何故か浮かない顔をする。


「甘やかした覚えは無いが、冒険者とはな……ユリ殿がいるから、安心ではあるが…」


「ええ、マリア様は毎日楽しそうに笑ってらっしゃいますよ♪」


師団長の不安を拭おうとボルドーがマリアの様子を教えるが、それでも師団長は浮かない顔をする。

この右目に眼帯を掛けた厳つい男性は、公都ガルデア方面軍聖騎士師団を束ねる師団長にしてマリアの父、ローレス・メイ・スティフォール伯爵様である。

その厳つい顔に似合わず、娘を心配する表情からするにボルドーと同じ親バカのような感じだ。


「だがなぁ…あのマリアに変な虫が付かないとは限らない…もしも娘が「この人と結婚する!」なんて冒険者なんぞ連れてきたら……軍を動かして、跡形も無く消し去ってやる!」

師団長は机を叩きながら吠える。

親バカと言うより、子離れ出来ない危ない父親だ。


「師団長が言うと本気でやりそうですね。その時は私も副官として参列いたします」


ボルドーも賛成の意を申し出るが、あくまでも「参列」で「参戦」しないようだ。


「おお、さすがボルドーだな!同じ娘を持つ親として共に戦おうでなないか!ハハハッ!」


「………」


師団長はボルドーが参戦してくれると思い大いに喜ぶ、ボルドーはただニコニコと笑うだけで黙っている。

ボルドーの言葉に満足したのか、師団長は「さて…」と呟き仕事の話しに戻す。


「遠征だが、治療魔法隊から「3名しか出せん」と言われてな…すまないが、それで遠征を組んでくれ…」


「そうですか…」


師団長の言葉に、ボルドーは仕方がないと思いながら頷く。

ボルドーの気持ちが伝わってきた師団長も、申し訳なさそうに続ける。


「赤虎も、今回は出せんそうだ…あやつも手負いで、半数近くの騎士が治療中だ…解ってやってくれ」

「はい、致し方ないかと…青蛇の団長も、『期待はしていな』いと転写器で伝えてきましたし…」


赤虎、青蛇とは騎士団の団名で『赤虎の騎士団』『青蛇の騎士団』『緑牛の騎士団』があり、それをまとめて『聖騎士師団』と呼ぶ。


今現在、青蛇の騎士団は遠征中であり、遠征先の戦況が思うように進まず膠着状態なので増援を求められていた。

だが、赤虎の騎士団は別の遠征先で辛くも勝利を治め凱旋するが、半数近くが負傷しており当の団長も遠征に行ける状態ではない。

行けるのは緑牛の騎士団だけで、嫌われ者のバルボネ男爵率いる騎士団だ、他の隊からの増員は望めない…


「すまないな…遊撃魔法団もなかなか話を聞いてくれなくてな、言い争いになってこちらから断ってしまった…」


「…エナノール卿は騎士団がお嫌いですから…いない方が良いと考える事にしますよ♪」


再度師団長はボルドーに謝るが、ボルドー自身は気にしていない様子だ。


「ふん、さすが英雄と言われるだけあるな…」


「英雄は如何なる時も、どんな状況にも流されませんから」


ボルドーが英雄と呼ばれる由縁は何も騎士としてと強さではなく、その卓越した判断力と平民上がりの貴族だからか、民衆から慕われる性格とカリスマ性がボルドーを英雄として成り上がらせた由縁なのだ。

師団長も長年部下としてボルドーを見ていたからか、どの騎士団団長よりも頼もしく思い信頼している。


「よし…頼んだぞ、バルボネ団長!」


「はっ!」


ボルドーは騎士の礼をして退室する。

自室に残った師団長はボルドーが出ていった扉を見つめながら呟いた。


「無敗の騎士…猛牛のバルボネ…か」




ボルドーは遠征隊が集まる演習場へと歩いていた…


何時からボルドーは敵から恐れられていた。

死を恐れず勇猛果敢に敵陣へ飛び込む姿は、味方の騎士達を鼓舞し戦況を変えるほどの士気を高める。

そして、自殺行為に等しい突撃に立ち向かう敵方を、狂気に満ちたボルドーがなぎ払って行く。

次第に敵は、猛牛のように突進してくるボルドーを恐れて逃げ出して行く。

生き残った敵兵達は口々に言う『あれは牛だ…死んでも止まらない猛牛だ…』と…ボルドーは二振りの剣を扱う、それを振り回すように突進してくる光景が牛に似ていた事が由縁のようだ。


演習場に着いたボルドーは壇上に立つ、すでに集まっている騎士達に向け話し出した。


「遠征が決まった!青蛇の増援として向かう…」


騎士達は真剣にボルドーの話を聞く。


「魔法師団は行かない…いや、不要だ!我々が行くだけで十分だ……そうだろう諸君?」


騎士達の怒号が飛ぶ「そうだ!」「荷物はいらん!」「邪魔だー!」と各々が言い、団長と同意見のようだ。


「我々『緑牛の騎士団』には敗北の文字はない!いかに果敢に、いかに早く敵陣を突破する事が我々の戦いかただ!…行くぞ!!」


「「「「おーー!!」」」」



英雄は騎士達を鼓舞し士気を上げ遠征へと旅立つ。

『無敗の騎士、猛牛のバルボネ』の新な戦いが始まった……





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