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閑話:リースと師匠

リースと師匠のお話し



公都ガルデアには魔法士学会というものがある。

以外にもガルデアは魔法を扱うための書物や器具、素材や人材が揃っているのだ。

500年もの間に一度も攻められていないだけはある。

世界で唯一現存する巨大な魔法核(魔石)を保有する都市なのだ。

魔法士学会がガルデアにあるのも、研究のためその魔法核を使用する事が多く、またその魔法核自体を研究するために作られた組織なのだ。



「この公式を……ダメだー!合わない」


リースは魔法士学会の自室で研究をしている。

彼女も魔法士学会員でA級魔法士の資格をもっている。


「何なのよーもう!」


酷く書きなぐった紙が散らばった自室は研究者らしいと言えばらしいが、一人の女性としてはどうかと思う。


「…転移陣って複雑過ぎるわ…」


リースは転移陣の研究をしている。

もうかれこれ2週間以上も悩まされ続けて爆発しそうだ。


「あー、師匠もめんどくさいのを持ってきたなぁ…まぁ嫌いじゃないけど、こうゆうの…」


今研究しているのは師匠からもたらされた研究内容で、しかも事案が極端に少なく手掛かりも情報もほとんど無い特殊な転移陣だ。

この学会内の書物庫にも載っていない未知なる転移陣を、手探りで解くなど至難のことだろう。


「はぁ、疲れたぁ…紅茶でも入れよ」


ガチャ!


リースが休憩しようとした所に、誰かがノックもせずに入ってくる。

リースはノックをしない者に心当たりがあるようだ。


「…師匠…ノックはしてください。いつも言ってますよね?」


師匠と呼ばれる者は背伸びをしながら扉ののぶをガチャガチャしながら入って来る。


「ほなら、のぶを低くしてや〜、この背じゃ開けるも疲れるわ〜」


「なら尚更ノックしてくださいよ、ローヌ師匠…」


ローヌは「固いの〜」と言い、勝手にリースが座っていた椅子によじ登り座る。


「ユリはんに似てきたんやないか?」


「師匠より師匠らしいので、真似したくもなりますよ」


もう一人の師匠ユリの方が上だと言われてローヌは不機嫌になる。


「なんやなんや?師匠にむかってぇ〜泣くぞ?泣いちゃうぞ!」


「勝手に泣いてください」


泣き真似をするローヌは「ちっ、つまらん奴やのぉ…」と悪態をつきながら机に置いてある公式が書かれた紙を見つける。


「ほうほう…だいぶてこずってるようやな?」


一瞬見ただけで何でも解るローヌは師匠としてはユリにだいぶ劣るが、同じ研究者としては神に等しいほどのローヌと、たかがA級魔法士のリースの間には差がある。


「神級魔法士様とは違いますから…」


「なんや〜ふて腐れてぇ?おだててもなーんもでぇへんよ?」


リースが言う神級魔法士とは…

魔法士にはA級、B級、C級と、A級より上の聖級、神級がある。

冒険者に例えるとC級魔法士はD級冒険者、B級魔法士はC級冒険者、A級魔法士はB級冒険者、聖級魔法士はA級冒険者、神級魔法士はS級冒険者となり、その最上級の神級魔法士はその知識、経験、魔法力は桁外れの人外とも言われている。


そんな神級魔法士にくってかかるリース。


「それなら師匠がやってくださいよ!どうせ暇でしょ!?」


「暇やないで、さっきも良いことしてきたし〜」


ローヌは手をヒラヒラさせながらリースを煽る。


「暇じゃないなら帰ったらどうですか!?私も暇じゃないんです!」


煽られたリースはご立腹のようだ。

ローヌもここまで言われたらムッとしてしまう。

座っていた椅子から飛び降り部屋の扉へと向かう。


「べーだ!」


なんとも、子供のような体型に似合う反抗的な顔だ。

ローヌはまたガチャガチャと扉を開けて去っていった。


「何が「べーだ」ですか、こっちがべーだですよ…まったく……?」


出ていった師匠ローヌに悪態をつきながら机を見ると、先ほどローヌが見ていた紙に何かが書かれていた。


「……まったく、師匠らしいわ…」


リースは椅子に座り、新しく紙を用意して書き出す。


「へぇ……なるぼと…じゃぁこれを……」


一休みすることを忘れて一心不乱に公式を書き出す。

師匠が書いた公式に感謝しながら……





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