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閑話:モットーの買取り事情

換金商のモットーのお話し



換金商の仕事は、だいぶめんどくさい…

朝から説明する。

先ずは預けている硬貨を商業ギルドの金庫まで取りに行く。

これはあまりにも金額的に硬貨が多すぎるため元金を含め防犯の意味で預けている。

売り上げはそのまま、あくまで元金のみを取りにくる。


その後は、昨日に買い取った品名と金額を書いた請求書類をギルドに提出する。

個人の換金商は、買取りは出来るが転売は出来ない決まりだ。

それを商業ギルドが各商会や商店・商人に、換金商が買い取った額の1割から3割増くらいで売る。

しかも商業ギルドは、金額の割合に関わらず銀貨1枚だけの手数料で代行してくれる。


書類提出後は、広場や大通りの露店商達と場所取りをする。

区画毎に割当てがあるのだが、公都のギルドに所属していない商人達は空いている所に入るしかなく、早い者勝ちなのだ。


そんな彼等は早く換金商を辞めたい。

だが、辞めたくても辞められない換金商人も中にはいる。


「あーあ…白金貨でも落ちてないかなぁ〜」


換金商のモットーは多額の負債を抱えてしまった。

それもバカげた金額で金貨700枚だ…


「持って来なきゃなぁ…でもなぁ〜…」


それでもモットーは後悔していない。

子供達の命を救えたのだ、お金では命は買えない…と思う。


本来なら薬としてグリーンベリオットを売ることは出来ないが、硬貨と硬貨との交換は禁止されていない。

両替商のように手数料は取れないが…



「モットーさん♪」


大通りの中側に陣取っていたモットーに声をかける人物が現れる。

モットーは辛気くさい顔でその声の主を見て驚いた顔をした。


「……シラネちゃん!?」


「やっほ〜♪」


「マ…マリちゃんも!?」


そこにはタマことマリとシラネが立っていた。


「なに辛気くさい顔してんの?」

「また何か盗まれたんですか?」


そうシラネ達は言うが、モットーは首を振り否定する。


「毎度毎度、盗まれたらたまんないよ。辛気くさいのは客が来ないからかな?」


「よかった〜」

「なんだ…つまんないの〜」


シラネは安心したように言うが、タマは本気で何かを期待していたようだ…


「で…なんかようか?一応商い中なんだけど…」


モットーは遠回しに「仕事の邪魔なんだよ!」と言っているが、タマがニヤニヤしながら偉そうに言う。


「そんな事、言っていいのかなぁー、良い話しを持ってきたんだけどなぁ〜♪」


「タマ!そんなこと言ったら、マギルスさんに悪いでしょ!?」


シラネに怒られたタマは「じょっ冗談だよぉ…」と耳をペタンとしながら謝る。

モットーは「良い話し」と言う言葉に少し警戒したがらシラネに聞いた。


「良い話し…か、まためんどくさいのはごめんだけど…で、どんな話しなんだ?」


「うん、マギルスさんが『治療院の装飾品類と公城で飾らなくなった絵画を買い取ってくれないか』って、言ってたの」


シラネはバルザラス男爵改めマギルスからの言伝てを伝えた。

モットーは目を点にして固まり、違う世界へと旅立っていった。


「モッチー?……ダメだこりゃ…」


モッチーとはモットーの愛称でタマが勝手に呼んでいる。

シラネはモットー肩を揺すり覚醒させる。


「モットーさん!モットーさん!――」

「――うお!?…はっ…心臓が止まるかと思った!」

「おおげさ〜」


現実世界に帰ってきたモットーはシラネの肩を掴み、確かめるように聞く。


「そそ…それは本当に…本当なんだな?…間違い無いよな?」


目をギラギラさせたモットーに言い寄られるシラネは頷き返しながら肯定する。


「うん、本当だよ。マギルスさんがモットーさんに買い取って欲しいって――」

「――やったーー!」


「「わっ!?」」


モットーはシラネの言葉に歓喜して踊り出す。

シラネ達は驚きあまりの声の大きさに二人して耳を押さえた。


「やった…やったー!これで借金が減るぞー!…ありがとう!ありがとう!」

「う゛…うん…」

「モッチー…うざいよ…」


踊りながらシラネ達に感謝を述べるモットーを呆れながら見守るシラネ達は、10分ほどモットーの踊りを観させられた。


歓喜の舞が終わり、シラネ達はモットーとバルザラス男爵邸に向かっている。


「本当に嬉しいよ!解るかなぁ〜この喜びを!!」


「はいはい…」

「借金は少ない方が良いもんね」


タマはモットーの話しに飽きたようで適当に返事をする。

シラネはちゃんと聞いてあげて返答してるようだ。


「だよな!シラネちゃんは解ってるなぁ!」


「シラネ姉はお金が好きだからねぇ〜」


「…あははは…」


そう、シラネは「お金好き」を公言しておりモットーと仲良くなったのも、この「お金好き」が原因でモットーに友達認定されたのだ。



「着いた!開けて〜」


「「はっ!お帰りなさいませマリ様!」」


バルザラス男爵邸の門に着くと、タマは慣れたように衛兵に言う。

衛兵も何故かタマを「マリ様」と呼んでいる。


「…マリ様?」


「開いたー、行こ行こ!」


タマはシラネの疑問に答えることなく門を抜け邸へ向かう。

シラネは「様…何かあるなぁ…」と疑いながらついていく、その後ろを「買取り♪買取り♪」と嬉しそうに歩いてるモットーがいた。


バンッ!!


「きたよ〜オナー!……いな〜い…」


タマは男爵がいるであろうマギルスの自室を開けるがここではないようだ。


「タマ…勝手に開けちゃ……」

「大丈夫!オナーはそんな事で怒らないから!」


シラネの注意にタマは何でもないように言い違う部屋に向かう。


「大丈夫なのか?自分の家みたいな感じで部屋を覗いてるぞ?」


「…う〜ん、大丈夫じゃないかも…後で叱っとくよぉ…」


シラネはモットーの言葉に不安感を示す。

その不安は的中する。


「あー!ズルいー!!」


応接室を開けていたタマが叫びだして中へ飛び込んでいった。


「もきゅー!?ですー」


中からはシラネが知ってる声がする。

シラネがタマの後を追うように入るとそこには…


「マリアばっかズルいぞ!」


「私が作ったですー!タマも自分で作れですー!!」

「あらあら…うふふ♪」


応接室の中にはタマとマリアがお菓子の取り合いをし始め、バルザラス男爵夫人のテトリーナが楽しそうに笑っていた。


「…なんか…すごい光景だな…」

「…お恥ずかしい限りです……」


シラネはお菓子を取り合う二人を見て恥ずかしくなり、モットーの言葉に謝罪する。

タマとマリアはシラネ達をよそに、お菓子が無くなるまで取り合いを続けた。

そのあとシラネにお叱りを受けたのは言うまでもない……



ちなみにモットーへの買取り依頼は、シラネのマリア達へのお叱りの最中にやって来たバルザラス男爵がモットーと面会し、買取り内容の確認をしてつつがなく契約された……





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