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タマよ、私がお姉さんです!

白い…ここは……


「……ん?」


目を擦りながら起き上がる少女、周りには何も無い白い空間…


「…私、宿に着いて……部屋へ……ベッドに座って……」


まだ寝ぼけている少女に、ノイズの様な声が聞こえてくる。


『ザッ……ネラ……ザッザザッ……ミリ……です……ザザッ』


「…え?なにこれ?」


ノイズで聞き取れ無い、急にキーン!となり頭が痛くなる。頭を押さえる少女に声が鮮明に届く。


『シネラちゃん私です!ミリファナスです!』


「っな!ミリファナスさん!?……まさか私、また死んだ――」


『――違いますです!ここはシネラちゃんの夢の中です!』


よかった〜、と安堵するシネラにミリファナスは続ける。


『時間が無いので手短に言うです!どこかに双子の兄妹がいるです。病気かもです!助けてくださいです!!…以上です!』


「ちょっと!どこかにって……ミリファナスさん?……おーい、ミリファナスさーん!」


要件だけ伝えてさっさと消えた…呼んでも返事は無い。


「……大雑把すぎて、わかんないよ……」


はぁ〜、と溜め息をついてからシネラは目を覚ました。




「……ん〜、夢か……」


「あっ、シネラちゃんが起きたです〜」


シネラが起き上がるのに気づいたマリアが「おはようです〜」

と、声をかけながよってくる。他の二人も「おはよう(ごさいます)」と声をかけてくれた。


グギューッ!


「お腹空いた……」


「ちょうど夕方の時間ですね、話しはここまでにして下の食堂に行きましょう」


起きて早々お腹を鳴らすシネラ、ユリは笑って夕食に行くと皆に言う、マリアがシネラをベッドから下ろして靴を履かせていると、シネラがマリを見てユリに聞く。


「…ユリさん、なんで猫の人がいるの?」


「猫人族だよ!一緒に宿に来たでしょ?」


「…そうだっけ?」


とシネラは首を傾げる。宿に着く前辺りからの記憶が曖昧で、居たような居ないような……

う〜んと唸るシネラに、ユリが軽く説明する。


「マリはこれから私達と一緒に行動します…まあ、仲間に成ったと言うことです。シネラちゃんも私達の仲間ですよ?」


「そうなの!私もユリさん達と冒険者出来るの!?」

やったー♪と喜びぴょんぴょん跳ねるシネラは、急に大人しくなりマリを見上げる。


「マリアとマリって似てない?」


「!?ああそうだね…マリアと私は名前が――」


「――タマ…」


えっ!?となるマリ、シネラはビシッ!とマリの顔に指を指して続ける。


「タマ!!…マリアと名前が被ってるから、あなたをタマと呼ぶから!」


「…タマ?……タマ!?」


「タマです〜」

「タマですか…」


いい名前でしょ?とシネラは自画自賛して無い胸を張る。ユリ(タマ)はわなわなして新しい名前を連呼している……


「……私も、マリア様と名前が被るので…いい名前ですね」


「なっ!?」


「です〜♪タマ、可愛いです〜」


「ななっ!!?」


タマ意外は新しい名前を受け入れたようだ。だがタマは納得しないので言い返す。


「猫族ならまだしも!猫人族の私がタマなんて!……シネラの方が合ってる――」


「――シネラちゃんは16才、タマさんは15才、お姉さんの言うことです」


「ですです〜、年上の言うことです〜聞くです〜」


「そっそんな〜……」


二人に論破?諭され項垂れるタマ、シネラがトコトコと近づきタマの頭を撫でて「よろしくね♪タマ!」と言う。

ユリが「さてと…」と言い夕食に行くはずだったので向かう事にする。

タマはシネラに新しい名前を連呼されながら手を引かれていく、食堂に向かう二人は姉妹のように見える…姉がシネラで妹がタマだが……




夕食を終え、マリアとタマが外へ行きたいと駄々をこねたが、ユリに怒られ渋々部屋へ戻ってきた。そんな二人はお風呂場に行っている、今部屋にいるのはシネラとユリだけだ。


「ユリさん、なんで私を?」


「……頼まれただけです。シネラちゃんが気にする事はないですよ?」


シネラは首を横に振る。


「うんんっ…違うの、そうじゃなくて……なんて言うか、こう…あの……」


シネラは、お礼を言いたいが言葉が定まらない、ユリも何が言いたいかわかるが、困る姿も可愛いので少し意地悪く言う。


「シネラちゃんは、二人より年上ですから……私の言うことをちゃんと聴きますし。またマリア様達にも言ってくれますよね?」


「えっ?あっ…うん……」


「よろしくお願いしますね、シネラお姉さんっ♪」


はい!!と元気よく返事をするシネラはユリの目が笑っていないことに気づいた。

たぶん夕食後の事だろう、めちゃめちゃキレてたし……話題をかえよう。


「ユリさんあの〜、私…自分の名前しかわからないの…」


「……薄々は気づいていました。森で会った時も、急に名前を思い出していましたし…」


あの時の事は、急に名前をつけると言われて思い出した様に見えたようだ。


「焦らず、ゆっくり思い出していけばいいでしょう。わからないことや、出来ない事は何でも聞いて私を頼ってください…シネラちゃんの為なら何でもしますよ♪」


優しく諭すユリだが最後はおどけて魅せた、シネラは「うん!」と頷き頭を撫でられた。そうしているとマリアとタマがお風呂場から帰ってくる。


「ただいまです〜」

「いいお湯だったよっ!シネラちゃ…さんもどうぞ…」


「うん、シネラでいいのに〜」


「でも〜……」


獣人族は上下関係をハッキリさせる種族が多い、猫人族も例外に漏れず、成人した者は一つ違いでも敬語を話す。


「いいの!好きなように呼んで、私もタマって呼んでるし!」


「う〜ん…わかったよシネラちゃん」

「じゃあ〜私は〜シーちゃんと呼ぶです〜!」


「それはダメ」


え〜なんでです〜?とマリアが言うが、シネラの中の「しーちゃん」は紫織だけなのだ……


「ダメなものはダメ!シネラに統一!」


「は〜いです〜」


シネラに、めっ!とされるマリアを、ユリは心の中で「お姉ちゃんに怒られる妹」と思い、微笑ましい気持ちになった。





冒険者ギルド公都ガルデア支部ギルドマスター部屋では、アルバードが報告を受けている。


「モニカ…間違いないか?」


「はい、比較対照がいたので間違いないかと…」


報告をする人物はギルドの受付にいた女性で名前はモニカと言うらいし


「……そうか……今日はもういいぞ、明日も休みでいい…魔眼を使ったんだ、疲れただろ?」


「はい、お言葉に甘えて明日は休ませていただきます」


「そうしてくれ、この事は――」

「――他言無用…ですね?」


アルバードは「そうだ…」と頷き、モニカは一礼して退室していく。

背もたれに深く腰掛け深い溜め息を着くと、独り言の様に喋るアルバード…


「…人為的、いや神為的か…猫人族のようで猫族の波長が強い、しかも年齢的には成人しているのに7・8才の子供のような体格……神に愛されなかったのか……いや、何かしらの加護があるとモニカか言ってるんだから間違いないか……」


う〜んと唸り黙って考える。考えるが訳が解らなくなるので、途中で考える事を辞め愚痴るように独り言を喋る。


「ユリ嬢の時も色々なことがあったな……依頼のたびに毎回問題を起こして、よく冒険者証は偽造扱い……あれで俺より年上ってんだからなぁ……ユリ嬢がB級に成ったも今の俺と同じ年か……世も末だな……いや俺も頑張るか!ガハハハッ!!」


アルバードは42才で二人の子供がいる中年の男性、ユリが年上とすると…うう゛んっう゛ん才になる。本人に言うと殺されかねないので心の中、では無く墓まで持って行くだろう…たぶん……


「さーて!久しぶりに楽しくなりそうだな!シネラちゃん♪」


そう言いながら部屋を出るアルバード。

楽しそうにスキップしながら帰る様子を何人もの冒険者が見かけたが、理由は本人しかわからない。理由の半分は、シネラが可愛いからであるのを、ユリの耳に届いて半殺しされるのはまた後日の話しに……






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