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始まりは、真ん中です!

『――きて』


……ん?何だろう、暖かい――


『おきてぇ!』


 両肩を激しく揺すられる。まだ寝ていたいが、右腕で身体を起こす。

 ここは、何処だろうか?白く何も見えない、目を擦り瞼を開けると後ろから声がした。


『こんにちは、白原しろはら)小咲(こさき)さん』


 後ろを振り返ると、如何にも女神と言わんばかりのコスプレをした女性が、不安そうな表情で私に話しかけていた。


『気分はどうですか?なんせ初めなので……何処か痛みとか、変な感じは無いですか?』


 女神風コスプレ女性が私を撫で回すように見ながら尋ねてきた。

 なんの事か解らないが、右手で身体を確認してみる。


「はぁ、痛みですか……っ!?」


 何処か懐かしい感覚がある。いや、その逆……右腕を動かしその違和感に触れる。

 そこには切除したはずの左腕と両足があり、左腕から順番に触ってみる。



「腕……ああ、足がある!!」


 何故、と思う。腕と足が生えてきたのか解らないが、たぶん夢だ。触るだけでなく肘を曲げたり、足首を回してみたりと感触を確かめてみる。


「へぇ~、ふーん」

『大丈夫みたいですね、それでは白原小咲さん、まずは貴女に謝りたい事があります』


 女神風コスプレ女性が何で私の名前を知っているのか気になるけど、ここは夢の中だから何への謝罪なのか聞いてみる。


「夢の中で謝れても困るけど、何を謝ってくれるの?私は、初めてお姉さんと会うから、何の事だか解らないですよ?」

『いえ、夢では無いですよ、此処は……え〜っと、現世と来世の真ん中ですね。あと私は、女神のミリフィナスです!ドヤ!』


 意味不明な説明と痛い自己紹介をされてしまった……ドヤ、と言ってる時点で痛い人だ。

 返す言葉が見つからず、痛い女神風コスプレ女性が謝りたいと言っていたので、とりあえず聞いてから考えようと思う。

 まだドヤ顔をしている自称女神。何でそんなにドヤ顔を私に向けるの?まあ、聞いてみるしかないか……


「あの〜、それで、謝りたい事とは何ですか?」


 自称女神は『はっ!?』としてから神妙顔に変わり、私の前に正座をして、土下座をしてから話し始めた。


『白原小咲さん……前世では辛い思いをさせてしまい、ごめんなさい。あんな風に成るとは、思わかったの――』


 前世?と思ったが、神妙な顔で話す自称女神の言葉に、再度、耳を傾ける。


『――貴女が地球へ生まれる時に、私は貴女に加護を与えたの……だけど、地球は魔素が薄くて、与えた加護が魔素の代わりに、貴女の両足と左腕、そして生命力……地球の言葉では、免疫力を奪ってしまったの、それで――』

「――何で!?何で私の病気を知ってるの!加護って何!?それのせいで私の人生が滅茶苦茶になったなんて、ふざけたこと言わないでよっ!」


 私は、自称女神を上から睨み付けるように立ち上がり、怒鳴った。

 夢だけど、今までの人生を、バカにされた気がした。加護?魔素?意味が分からない!

 それでも自称女神は、私が怒っていることを当然の事の様に話し続ける。


『小咲さんの怒りは最もだと思います。申し訳ありません……謝罪の前に、私達の世界と貴女に与えた加護について、この私がいる世界と小咲さんの世界との繋がりを、お話ししさせてください』

「私がそれを聞いて何が変わるの!?私はこれからもあの姿で生きて、そして……っ!残りの時間をっ……うぅ――」


 頭が割れるように痛い。涙もこぼれる。膝から崩れ、私は昨日の担当医と母の会話を思い出した。


「(余命数ヶ月)」

『余命数ヶ月』


 顔を上げる。記憶の中の担当医の声と、自称女神の声が重なって聞こえた。


『もう年を越せない……残りの時間を大切に、でしたね……』


 今の言葉も、担当医が言っていた言葉と一緒だった。

 何故その事を知ってるのか?と顔に出ていたのか、自称女神は少し微笑み私の頬に手を添えて、涙を拭った。


『全てをお話しします、聞いてくださいますか?』


 その優しい言葉に、私は気づいてしまった。

もう、私は――

 気づかされた私は、弱々しく頷き、それを確認した自称女神は、改めて語り始めた。



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