弐(4)
それから陽女さんを家の前で降ろしてそのままハジメの店に向かう。
こじんまりした駐車場に車を停めてからんからんと扉のベルの音を鳴らし中に入ると龍の顔のアップが飛び込んできた。
「近いです…」
『勤めご苦労』
そういうと龍は俺の顔の前からひき、カウンター後ろのカップがずらりと並んだ棚の前に行った。
労いですか。
もう少しやり方あると思いますよ。
別にいいけれども。
「ソウ、いらっしゃい。早かったね」
「んー、なんかお使い行ったら向こうでいいように使われてかみさまが珍しくご褒美に欲しい情報くれた」
かみさまのお使いは基本的に無給だ。
何ももらえやしない。
ただ使われるだけ。
たまーに何か霊的に使えるモノをもらったり預かったり本当にごくごくたまになのだ。
ご助言は頂けることも多いけど分かりづらいことも多いからこんなにピンポイントで欲しい情報をくれるのは珍しいのだ。
そのくらいかみさまとしてもハジメの行動は褒められたものなのだろう。
もしかしたらあそこのかみさまとこちらの龍さんが仲良いのかもな。
「ハイ、約束のブツでございます。可愛いだろ?」
ハジメの前のカウンターに座り鞄から龍の置物の入った袋をだし、その袋から置物を出してハジメに顔がみえるように机に置く。
その龍をハジメはじっとみた。
「触っても?」
「もちろん」
「…こんな可愛いもん?」
「いいえ、本人…本龍はイカツイよ。でもこう言い表せないような美しい白金でその背の金と身体の白がそれを現してて似てるんだ。それにこの店に置くなら可愛い方が雰囲気あうだろ。イカツイと怖い店になるじゃん」
後ろで龍がうんうんと頷いている。
とてもお気に召されたようで何よりです。
「お気遣い頂きありがとうございます。はい、珈琲。で、この子いくらだった?」
ハジメがカップに珈琲を注ぎそれを俺の前に置きながら聞く。
それで俺は鞄から領収書を2枚取り出して渡す。
1枚は土産物屋のそのままだ。
「いつもの結界代と龍の置物代790円で」
「あら、リーズナブル」
「お使い代まではいいよ。そのままどうぞ。いつもご贔屓くださりありがとうございます」
ハジメがレジに保管してあった封筒を出してその中にレジから小銭をちゃりちゃりと足している。
そうして俺にそれをそのままくれた。
俺は確認もせずそれを鞄にいれる。
「龍さん的にはどうなの?どんな感じ?」
「俺のみた感じお喜びだけど。1番に迎えてくれたし。あ、カップ棚の1番上の段に置いてさしあげて。そこお気に入りみたい」
俺の言葉にうんうんと頷くのであっているようだ。
しかし見れば見るほど立派な龍で俺的にもこの龍には色々質問したいのだけど答えてくれるだろうか。
あ、でもそれより
「ごちそうさん。そろそろ子どもら帰ってくる時間だから帰るわ。約束があるんだわ」
「はいはい、ありがとうね」
俺は小銭入れから珈琲代をぴったり取り出すとそれを机の上に置いて
目の前のカップ棚にいる龍に頭をさげて
ハジメにまたなと手を振り
からからんと扉のベルの音を鳴らしてハジメの店を出た。
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