弐(2)
家の近く塀まで歩くときゃっきゃと明るい声が聞こえる。
八重と咲龍だ。
いってきまーすと声がして門から二人が出てきて俺を見つける。
「「お父さん!!」」
そういって二人が駆け寄る。
俺はその頭を撫でた。
「学校だな、いってらっしゃい」
そう笑うと二人はにっと笑っていってきまーすと告げて手を振り駆けていった。
今日も元気で何よりだ。
二人の声に気づいたのか陽女さんもつっかけをはいて門から出てきた。
「宗さん、お帰りなさい。ごはんできてますよ」
「ありがとう。お腹すいたよ、ただいま」
そう言って靴を脱ぎ中に入る。
お味噌汁のいい匂いだ。
「すぐ用意できますけどすぐ食べますか?」
「うん、すぐ食べるよ。手洗ってくるね」
洗面所で手を洗い食卓に座る。
俺と陽女さんの分の鮭とごはんと薄あげのお味噌汁、それからたくあんが用意されていた。
今日もおいしそう。
「いただきます」
「はい、召し上がれ。今日はお仕事ありますか?」
「ない予定だったんだけど、今日ついにハジメの店に龍がつきまして」
「あら!ついに!いい店ですものね」
「そう、それでハジメさんったら、ほらあの人ナチュラルにお優しいから
龍さんが望まれたわけでもないのに持ち前のサービス精神で
龍さんをおまつりする為の置物をみつけてくれって。
だから今日は陶器屋を色々見ようかと」
「あら、素敵」
「陽女さんよければご一緒します?ついでにランチでもしようか」
「あらあら!嬉しい!デートですね!」
そういってにっこり笑う陽女さん、可愛い。
もはや結婚して10年たつのにいまだデートですねって笑ってくれるこの人には本当に和む。
「それじゃあ食べたら支度しようか」
「はい」
俺達はゆっくりごはんを済ませるとそれぞれ支度を済ませた。
俺は黒のタートルネックにジーンズをはいてジャケット、陽女さんはグレーのニットのワンピースに白いストールを羽織った。
ちょっとよそ行きの格好だ。
愛車の白のCR-Vに乗る。
ドリンクホルダーには陽女さんがハーブティーを淹れてくれたタンブラーを並べる。
「それで場所はどこか決まってるのですか?」
「門前町かな。なかったら近くの温泉街を順番に回りたいんだ。なんか土産物屋で手に入る気がするんだよね」
「なるほどー。では安全運転おねがいします」
「任せて!」
アクセルを踏み出発する。ここから門前町まで30分くらいか。
たぶんそこで見つかると思うのだけど。
ついでだしお参りもしていこうかなぁ。
時間あるかな。
二人が帰ってくるまでに戻りたいしランチもしたいし。
考えても仕方ないからとりあえず行くけど。
最悪今日見つけなくてもいいしね。
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