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魔導防衛軍魔法少女隊  作者: 一二三五六
第一章 結成!魔法少女隊
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第一章10 『魔法少女隊とは』

「みんな座ってスカートから手を離してくれたところで――改めてようこそ!選ばれし少女諸君!君たちは通達を出した時かられっきとした魔法少女だ、胸を張って戦ってくれ」


 全員の視線が集まる中、石動はそれを楽しむように続けた。


「で、魔法少女隊とは一体なんだという疑問がある子は中にもいるだろうから説明しよう。魔法少女隊とは――俺のハーレムだ!」


「いちいちボケを挟まなくていいですから続けてください」


「真面目だね梓ちゃんは、そこも可愛いけど。さて、魔法少女隊とは簡潔に言えば候補生のみで編成された部隊だ。まあ実際候補生だけで編成するのは無理だから昇格させてもらったけど、細かいはこの際気にしなくていい」


「そ、そんな適当で、い、いいんですか?」


「いいのいいの、重要なのはそこじゃないから」


「重要なのは?」


「どういうことですの?」


 その質問に対して、石動は一度咳払いをすると真剣な表情に切り替える。


「みんなは、魔獣がどこから現れるかは知っているかな?」


「えーと、私たちの世界とは別の異世界からですよね?」


「その通り、俺たちがいるこの世界の他にも、同じようでいて違う世界が多く存在する。魔導防衛軍で確認できているだけでも一〇〇は軽く超えている。その異世界に住んでいる生物たちを俺たちは魔獣と呼んでいる」


 一度話を区切った石動が、部屋の壁を軽く叩くと、円卓の中心に立体的なグラフが二つ現れた。一つはグラフが何本も並んでおり、もう一つは一本だけ伸びているグラフだ。これはエントランスホールにあった総司令部の見取り図と同じ技術だ。


「みんなの前に出したのは、この基準次元に現れた魔獣の数だ。左は過去数年の間のグラフで、もう一つは今年のグラフ。茜ちゃん、このグラフを見て何か気づいたことはあるかな?」


「うーんと……あっ、わかった!どんどんグラフが高くなってる!」


「それも正解だけど、他にも変なところがあると思わない?」


その問い掛けに茜は頭を捻る。それを聞いていた陽和たちも同じように探し始める。

その中で、梓がふと呟いた。


「――多すぎます」


「何が多すぎるの〜?」


「見てください。左のグラフの去年と今年の差を、余りにも違いすぎます」


「言われてみれば、確かに高いわね」


「というよりも、おかしいですわこのグラフ」


「えっ、何かおかしいなところがあるのですか渚様?」


 その異様さに気づき、険しい表情になっている渚はグラフを睨みつけて言った。


「今年はまだ、一ヶ月しか経っていませんわよ」


「ッ!」


 このグラフの異様さ。それに気づいた一同が寒気が走った。

 石動は眉を寄せて続けた。


「そう、去年までのグラフは全て、一年間に現れた魔獣の数だ。そして今年のグラフは、四月の間に現れた魔獣の数を現している。この数は異常だ」


「四月の内にこんなにも魔獣が……」


「でも、なんで今年になって突然?」


 陽和の疑問に答えるように、石動は話を切り出した。


「これはあくまで推測だけど――魔獣を意図的送り込んでいる者がいる」


「い、意図、的に?」


「ほえ?魔獣って誰かがこっちに呼んでるんじゃないの?」


「いや、魔獣っていうのは所謂迷子なんだよ。何かしら原因があって異世界へと渡ってしまい、知らない場所で訳もわからず暴れている。だが、ここまで多いとなると誰かが別の目的で魔獣を基準次元へ送り込んでいるとしか考えられない」


「だとしたら、それは一体誰ですの?」


「残念ながら、そこまではまだわかっていない。でも確実にわかっているのは、このままでは我々の戦力が足りず、増え続ける魔獣たちによってこの世界が崩壊する可能性があるということだ」


 この世界の崩壊。

 それが近づきつつあることに少女たちに不安が過ぎった。

 そして、それを見越した上で石動は言った。


「――そこで目をつけたのが君たちだ!」


「私たち?」


「その通り!魔法の素質が大人よりも高い子供の中から、さらに厳選された優秀な子供たちを魔導士として魔獣たちと戦うことで、戦力不足を補い世界の崩壊を回避する!これが魔法少女隊を作った理由だ!」


 石動の話を聞いた陽和は、自分と共に戦う少女たちの顔を見る。その真剣な表情に頼もしさを感じた。


 ――優秀な子供……私もその一人なんだ。


「私たちが選ばれた理由はわかりましたが、何故女の子限定したのですか?」


「それは私も気になりました!何故男の子じゃなかったんでしょうか?力や体力も男の子の方が上だと思いますが……」


「そんなの決まってるじゃないか」


 なんの疑問もなく真顔でそう言った石動を見て、陽和たちは首を傾げた。理由が全く思い至らない。何故女の子の方が良いのか。

 その答えは至って簡単――、


「幼女が大好きだからだよ!」


 部屋の空気が一瞬にして冷めた気がした。


「だって幼女だよ幼女?可愛いじゃないの!表情や仕草の一つ一つが愛くるしくて、一人一人に個性があるのもまたいい!成長するのはとても残念だけど、短い期間の中での輝きというものは実に素晴らしいものだよ!それに幼女を魔導士にして魔法少女の部隊を作るっていうのも昔からの夢でね?どうしても叶えたかったんだよ!正直魔獣にはちょっと感謝してたりするんだよ、だってこんな異常なまでに出現してくれたおかげで魔法少女隊を作る大義名分ができたんだからね!本当に素晴らしいんだよ魔法少女というのは!何が素晴らしいかというとだよ?――」


 ベラベラと凄まじい勢いで幼女の素晴らしいさや魔法少女の素晴らしいさを語り始めた石動に、一同は唖然。そして一斉に小声で喋り始まった。


「この方は本当になんなんですの?本当に師団長なんですの?」


「私の実家にもそういうお客様はいましたけど、あんなに堂々とされている方は初めて見ました」


「わ、私も可愛いに入っていいのかな?こんなに太ってるのに……」


「多分翼さんのことだから範疇に入ってるんじゃないかな?」


「破廉恥です!破廉恥過ぎますよあの人!」


「なんか色々面白い人だよね〜」


「面白いなんてものではありません!」


「茜知ってる。ああいうのロリコンって言うんだよね?」


「ちょ、ちょっと怖いです……」


「こんな変態が直属の上司とかアタシ嫌なんだけど」


 出会ってまだ間もない少女たちが、可笑しなキッカケで仲良くなろうとしていた。

 その時だった。


「師団長!石動師団長は居られますか!」


 部屋のドアを壊れそうな程強く開けて入ってきたのは一人の女性。軍服に付いている階級章からしてそれなりの地位のある魔導士であることがわかる。


「どうした?」


「東京都品川区に多数の魔獣が出現。現在目黒区駐屯地の第四小隊が応戦しておりますが、魔獣の数が多くこちらが押されている状況です」


「第一連隊は出動できないのか?」


「それが、現在江東区と江戸川区に出現した魔獣と交戦中でして、品川区への増援が間に合いません」


 突如として現れた危機に陽和たちは息を飲んだ。先ほど話していた魔獣による崩壊がもう目の前にあることを実感する。

 そんな中で、石動はとても落ち着いていた。


「わかった。それは俺がなんとかする、佐々ささがわ准尉は引き続き司令部での交信を」


「了解致しました――ですが、どうなさるおつもりですか?」


 佐々川と呼ばれた女性が石動に尋ねると、彼はニヤリと笑った。


「簡単だよ。品川区に別の部隊を送ればいいんだ」


「別の部隊?ですが第一連隊内の部隊は他に……」


「いやいるよ、ここに」


「ここ、に……?」


 佐々川は先ほどから視界に入っている陽和たちに焦点を合わせて、思わず固まった。石動の言葉の意味を理解した彼女たちもざわめき始めた。


「つ、翼さん、まさか……」


「さあ諸君!魔法少女隊初の任務だ、気合い入れていこう!」


 魔導島に来てから早四時間。

 陽和たちは早速戦地に立たされることになった。


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