プロローグ 『憧れの始まり』
テーマはズバリ『超熱い!魔法少女モノ!』
時に可愛く、時に熱く、時にシリアスに、時にカッコ良く!
魔法や武器で悪を討つ!!
そんな作品に仕上げていきたいと思います!
是非とも応援よろしくお願いします!
あの日のことは、きっと何年たっても忘れないことだと思う。
八月八日、私が五歳になった日。
おじいちゃんとおばあちゃんと妹と一緒に、初めて遊園地に行った。
そこはテレビのコマーシャルで宣伝されているようなところではなく、知っている人は知っている小さな遊園地だったけど、いつも近くの公園や幼稚園の友達の家でしか遊んだことがなかったから、すごく嬉しかったのを覚えている。
おじいちゃんとおばあちゃんは、「他に行きたかったところはなかったかい」って言ってくれたけど、私が「ここがいい!」って言うと、二人は優しく笑った。まだ二歳の妹も、一緒になって笑っていた。
初めての遊園地はとても楽しかった。
メリーゴーランドにコーヒーカップ、鏡の迷路にお化け屋敷。
観覧車はなかったし、ジェットコースターはテレビで見るものより短くて、それほど速くはなかったけど、それでも、本当に楽しかった。
お昼ご飯を食べ終えた後、トイレに行きたくなった私は、そのことをおばあちゃんたちに伝えた。「一緒に行こうか?」とおじいちゃんに聞かれたけど、「もうおねえちゃんだからひとりでいける!」と言って一人で行った。
トイレは私たちが食べていた場所から少し離れたところにあったから、何事もなく済ませることができた。
だけど、
異変が起きたのはこの後だった。
しっかり一人でトイレを済ませることができて、おばあちゃんたちに褒められるかもと楽しみにしながら出てきた私は、異変に気付いて立ち止まった。
誰もいない。
遊園地に来ていたお客さんも。
遊園地で働いている従業員さんも。
風船を配っていたウサギさんも。
お昼ご飯を買ったお店の店員さんも。
掃除をしているおじさんも。
トイレに入る前までそこにいた人たちが、一斉にいなくなっていた。
初めは「みんなかえっちゃったのかな?」なんて呑気なことを言っていたけど、人の気配がしない、遊園地の音だけしかない空間に、五歳になったばかりの私はだんだん寒気を感じた。
「おじいちゃん! おばあちゃん! おはな!」
大きな声で呼んでみたけど、その声に反応する人はいなかった。
私は恐怖に負けて、泣き始めた。
泣きながらもおばあちゃんたちのことを呼び続けた。
それでも返ってくる声はなかった。
遊園地の中を走り回って、名前を呼び続けた。
それでも、返ってくる声はなかった。
この世から自分以外の人が全員いなくなってしまったのではないかと、私がトイレに行かなければ、おばあちゃんたちはいなくならなかったのではないかと、そんなことを考え始めていた。そんなのは有り得ないと今なら否定できるけど、あの頃はとにかく怖かった。
人が消えてどのくらい経ったか、泣いている私は音を聞いた。
遊園地の音ではない。
外からの音。
誰かがいる。
そう思って一瞬嬉しくなった。
だけどその音は、日常では聞かない音だった。
雪崩れ。
それに近いような音が、物凄い速さでこちらに向かってきていた。
――何かがくる。
感じたことのない感覚に、私は思わず近くにあったベンチの下に隠れた。
その一秒後。
何かが目の前を通り過ぎた。
さっきまで私がいた場所は、脚のようなもので踏み砕かれていた。
早まる鼓動が治まらない。
嫌な汗が全身から流れ落ちる。
恐怖に固まった首を必死に動かして、目の前の光景を見る。
メリーゴーランドも、コーヒーカップも、鏡の迷路も、お化け屋敷も、
全部無くなった。
ジェットコースターのレールが千切れて、乗り物がそこから落ちていくところを目の当たりにした。
――悲鳴が出ない。出したら死ぬ。
私は、この惨状の原因を目にした瞬間そう思った。
それはキツネ。
全長三〇メートルはある、全身がボロボロになった白いキツネ。
コーヒーカップの台の上で、息を切らしながら横たわっていた。
私は、動けなかった。
――動いたら、きっと殺される。このまま隠れてよう。
感じたことのない感覚が、私に危険を知らせていた。
白いキツネは四本の脚に力を込めて立ち上がった。この時の私にはよくわからなかったけど、そのキツネはもう立つのがやっとだったと思う。
キツネの顔は怒りと憎しみで歪んでいた。
そんな表情を見るのが初めてだった私は、思わず、短い悲鳴を上げてしまった。
慌てて手で口を抑え、下を向いた。
――お願いします、バレませんように。
必死に、必死に、神様に祈った。
それから何分経ったか、私はゆっくり顔を上げた。
白いキツネはどこにもいなかった。
安心した私は、ゆっくりとベンチの下から出た。
その瞬間、ベンチが横に吹き飛んだ。
「―――――ッ‼」
キツネはいつの間にか、私の後ろに立っていた。
物音も何もなかったのになんで後ろにいるのか、そんなことを考える暇もなかった。
――怖い。怖い。怖い。怖い。
恐怖が全身を駆け巡る。
歯が震えて噛み合わない。
目から、鼻から、体から、水分が止めどなく流れていく。
逃げたい。でも、逃げられない。
もう、私はここで死んでしまうんだと、五歳の私は無意識に思っていた。
あの人が、現れるまでは――、
お読みいただきありがとうございます。作者の一二三五六です。
今回はプロローグということである誰かの――と言っても主人公なんですけど、過去の話です。
突然消えた人たち、襲い掛かる化け物キツネ、そして『あの人』。これらが何なのかは後々わかっていくことでしょう。
プロローグなのであまり話すことがないので、一つ言わせてもらいますと……
「いいタイトルが思いつかなかった!」
本当はリリカルでマジカルな魔法少女やまどかでマギカな魔法少女みたいなタイトルにしようと思ったのですが、あまり良いものが思い浮かびませんでした。
でも大切なのは中身ですからね!……タイトルも大切だけど。
というわけで、また次回も読んでくださることを心から願っております。