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第九十話 光に縋る

肉体的に変化してしまったからなんだろうが、初めはまともに言葉を話せなかった。出せたのはまさに獣の唸り声だけだった。いくら自分自身で体感しているとはいえ、今の現状を受け止められるはずがなかった。夢であると信じ、目が覚めることを待った。だが、そんな時は訪れなかった。今も−。


助けを呼ぼう。とにかく人に会わないと。


少しでも安心したかった。今の状況を打開できずとも、共にいてくれる人が必要だった。


さっき触れた扉には鍵がかかっていた。誰かと会おうと必死だった俺は何度試しても開かない扉に怒りをぶつけた。


“ガン!”


…扉が開いた。映画のように蹴り開けた。ただ、扉は無事ではないようで、足が当たった部分がかなり凹んでいた。金属製の扉に跡が残るだから、その時から筋力が格段に上がっていた。それどころじゃなかった俺は開いたことだけにしか関心がなかった。蹴り飛ばした扉がまだ震えている内に外に飛び出した。


外に出ても不安が消えることはなかった。そこに人はいなかった。むしろ、長い間誰もいなかったように壁や床にひびが入り、窓のない閉鎖空間がさらに俺から希望を奪っていく。外に繋がる扉はないか、必死に探した。


扉は…見つかった。


しかし、その扉はあまりに場違いだった。


この扉だけが妙に新しく、生体認証によるロックがかかっていた。職場にもあったシステムだが、なぜこんなボロい場所に、と、さすがに違和感を感じ、すぐに立ち寄ろうとは思わなかった。そもそも開けるには網膜をスキャンされる。俺のが通るかなんてわからない。むしろ、通らない方が自然だ。…とりあえず、保留して他を調べたものの、他に出口らしいものはなかった。


通れるなんて思わなかった。当たって砕けろ、とその程度の考えだった。カメラに近き、右目を開いた。ここが通れなければ俺はどうなるのだろう。誰かが来るまで待たなければならないのか?最近つけられたような新しい扉があるから誰も来ない、なんて事はないんだろう。ただ、訪れる奴らは俺をこんな身体にした連中しかいない。目的はわからないが、いい方向に進むはずがない。…どうすればいいんだ?


“ガチャッ”


考え込んでいる間に認証は終わっていた。今の音、開いたのか?恐る恐る扉を押すと確かに開く。奥には白い明かりに照らさる、真っ黒な壁に囲まれた廊下が続いている。ここにいてもしかたがない。開いたことに疑問をもちながらも進むことにした。


時間感覚が狂っていなければ、だいたい数分程度だろう、突き当たりにまた扉があった。黒い木製の扉。また鍵がかかっていたが、今度は壊せということなのだろうか。さっきと同じように扉を蹴り上げた。…少し馬鹿だった。さっきとは違い、木なのだから薄ければ穴が空くだろうに。扉には大きな穴が空いたものの、通れるようなものではなかった。しかも、足を抜く際、破片で軽く足を切った。軽率さを恥ながらも空いた穴から腕を入れ鍵を開けた。


ライトはついておらず、真っ暗な部屋。スイッチは入ってすぐだったため、時間をかけずにすんだ。明かりが照らした部屋に俺は鏡を見たときのように驚いた。


武器…いや、兵器庫だった。

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