第八十二話 はじまりの記憶
−おはよ−
−わかってるよ。大丈夫だって−
−行ってくる−
「やっぱし駄目だったみたいだよぉ。」
会場から真っ直ぐ戻ってきたから、もう我が家についちゃってる。あれから狼やんは近づけたみたいなのにまた失敗してやんの。役立たず。今まではなんだかんだでちゃんと仕留めてたのに。
にしてもぉ、後ろがさっきから気になる…。
『狼さん放っておいて大丈夫なの?』
セフィはその事気にしてたんだ。だから落ち着かなかったんだ。
「大丈夫だよぉ。死んだりしないし。」
笑って言ってるが、内心かなりムカついてる。何へまやってんだよ。
自室に入ってすぐにPCを動かす。セフィの事気にしてる暇ないし。あんまり遅くなるといけないしね。よい子は早寝だよ。遅起きだけどね。
−ただいま−
−真っ暗だなぁ。電気つけなよ−
「ほらほら居たよぅ。」
バカ犬発見。ドームの地下だね。発信機が動かないとこみると雑巾みたいになっちまってんのかねぇ?いいきみ。ちなみに死んだら発信機壊れるから生きてはいるよ。
「さてさて、歌姫さんはどこに逃げたかなぁ。」
楽しくなんかないよぉ。でもこんな感じでいないと頭が沸騰しそうなんでねぇ。
歌姫さんのアドレスはもう知ってるからすぐわかる。打ち込んだらすーぐ出て来た。やっぱし逃がしてんじゃん。
ドームから数キロってとこだね。病院結構近いじゃん。急いでよかった。ちゃっちゃと入っちゃお。
『トーイッシュは心配じゃないの?』
声が震えてる。本当に心配してんだねぇ。でも、そんな事したって知らないよ。
「うん、これっぽっちもぉ。」
お、入った入った。って言ってもオレってバレないよういろんなとこ経由して病院のホームページに入っただけなんだけどね。こっから次はデータ管理用のPCまで潜らないといけないんだよね。したいことするには…。
−誰もいないの?−
『トーイッシュって冷たいんだね。』
手が止まった。…冷たい?俺が?あんなけだものよりも?うるさいよ。何も知らないくせに。わかったように言うな。
「そんなことないよぉ。悪い子にはお仕置きするものでしょ?それと同じ。」
感情を表に出さないのはなれた。出さないって言うより出したくないの方が正しいかなぁ?たまっても寝たら全部忘れちゃうし全然平気。
『…トーイッシュは…何してるの?』
「探検〜。」
データベースまできた。こっから少しお待ちを。お楽しみには我慢がいるもんだよねぇ。
−…とーさん?かーさん?−
さーて第二ラウンド開始までカウントダウン始まるよ〜。がんばれ〜歌姫さん。