第八話 儚い希望
爆音が響いた後、扉を開けようとしたが、開かない。鍵がかかっている。チッ、はめられたか…。この扉しか外に繋がっていないというのに…。これでは本当に逃げ道がない。何かあるはずだ。
辺りを見渡したがこの部屋には中央にコンピュータがあるだけだ。他に何か…。そのとき、通気口から煙がもれていた。眠らせるつもりか…。本当に追い詰められた。
…ガスが効いてきた。
…目が霞む。
捕まる訳にはいかない…。
だが、このままでは…。
壁にもたれかかった、その時だ。…壁が動いた…感覚があった。気のせいかもしれない。だが、もう他にすがるものがない。
今にも切れてしまいそうな意識をどうにか保ち、起き上がって、何もないただの壁を押した…。
長い間使われていなかったのか、初めは固かったが、開き始めればそうでもなかった。
「…通路…」
暗い一本道だった。奥によわよわしいが光が見えた。俺にとってはまばゆいばかりに輝く希望の光だった。もし隠し部屋であれば、奴らも知らないかもしれない…。扉を閉め、俺はその光へ歩きだした。
なんだか今日は地震が多いなぁ。
ノアのデータにある、『金魚』っていう魚が水のなかをスイスイ游いでるのを眺めながら、そんなこと考えてた。
今日は『生き物』について勉強した。あれ?…『生物』って短くするんだっけ?どっちでもいいよね。『イヌ』とか『ネコ』とかいろいろなホログラムを見ながら、遺伝とかいうものを学んだ。触れないからよくわからないけど、抱いたらふかふかで気持ちいいんだろうなぁ。今はこの『金魚』っていう子がお気に入りなんだぁ。
『ソロソロオヤスミクダサイ』
…そう言われたら、眠くなってきた。今日も変わらない一日だったよ。これから寝よっと、とベットに飛び込んだ、その時だった。
“ガシャッ”
何の音?って思って、聞こえた方を振り返ったら、見たことのない光景があった。
ちょうどベットが置かれてるのと、反対の角の壁が…開いた?その奥は真っ暗でなんにも見えなかった。
…出られるの?嬉しくなったけど、すぐに嬉しさも消えてしまった。中から人が出てきたんだ。
恐かった。巨人みたいに大きいし、戦争の映像で見た血だらけの兵隊みたい…。だけど、その人はすぐに大きな音をたてて倒れた。…ドアが閉まった。