表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/173

第七十七話 逃避

バンが俺の後ろについて、俺はターシェを背負って階段を駆け降りて行く。本当は何段も飛んで下りたいところだが、傷ついたターシェの身体に響くといけないから、一段ずつ下りないとな。


今俺達が向かってんのは運搬用出入り口−ステージに荷物を運ぶ際に使うとこだ。一般出入り口じゃ、この混乱で人がいすぎて通れないだろうし、なにより奴が追いかけてきたら、余計に被害が出る。


階段が終わり、広い空間に出た。運ばれた荷物を一時的に保管するスペース。この先に運搬用の車があるはず。そいつを掻っ攫って乗ってけば…。


『先輩、先に行っててください!』


数え切れないくらいの木箱やなんかを通り過ぎて、もうすぐ駐車場が見えてきそうなとこまで来て、バンが壁の方へと走りだした。正直、走り出したから気付いたが、なんて言ってんのかわからなかった。


“ギギギギギッ”


コンクリでできた倉庫内に重たい音が響く。音のする方を向くとシャッターが下りてきている。なるほど、よく周りが見えてやがる。


『ちょっとは時間稼ぎになるかと思うッス。』


追い付いてきたバンが少し息をきらせながら言う。


「十分だ。ありがとよ。」


俺もこういう時こそ冷静でないとな…。ターシェをしっかりと抱えなおした。


駐車場に着き、近くの車に駆け寄る。黒のワゴン。これを使えばターシェを救える!


『先輩、下がっててくださいッス。』


言うと同時にバンが持っていた銃を、思いっきり振りかぶり、運転席のガラスに打ち付けた。ガラスは跡形もなく砕くだけ散り、少し残った部分も砕ききる。鍵を開け、バンは運転席、俺はターシェを後部座席に下ろし、背中の傷を見た。


傷自体は浅く、血も命に関わるほどは出てはいない。つっても、余裕があるわけじゃねぇ。まだあいつが追ってきてるにちがいない。だから、早くここをでねぇと。


「バン、出せるか?」


『もう少し待ってくださいッス。』


このタイプの鍵は−今広まってる車全部についてるんだが−チップでの認証確認でエンジンがかかるようになってる。登録されてる奴にしか運転できないって訳だ。つまり、俺らには運転できないってことでもある。


そこで登場すんのがバンの持ってるハッキングソフト、フェイクだ。これはインストールさせると、今までの履歴をあさって、一番最後に使った奴のアカウントで入り込んじまう、っつーもんだ。昔の連れがくれたもんでなかなか重宝してる。


“ピッピーッ。”


『先輩、開き−。』


丁度、バンが後ろに振り返えった時だった。突然、車全体が揺れ、低い爆音のような音が響いた。きやがった。


恐らく今のはバンが閉じた防壁を爆発してんだろう。ただ、今のこもった音だと、まだもってるみていだな。つってもかなりの振動だった。次もつかわかんねぇぞ。


「バン!早く出せ!」


俺が言い切るのが早いか、バンが振り返るのが早いか、すぐに振り返えってエンジンをかけた。


『出します!しっかりつかまっててくださいッス!』


一気に踏み込んだから少しよろけちまったが、止血してる左手は離さなかった。


すぐに立て直したが、再度あの揺れがきた。さっきよりも耳に響く爆音とともに…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ