第六十六話 嵐の前の静けさ
突然長期間お休みしてすいませんでした。メッセージを送ってきてくださった方、定期的に来てくださった方ありがとうございます。更新はまだペースが落ちるかもしれませんが、少しずつ書いていくつもりですので、よろしくお願いします。
“ワァーーー!!”
スゴい歓声。こんなにたくさんの人がいるんだもん。当然かな?それにしたって…耳が痛い。
ステージに青い髪の女の人が出てきた。白いドレスでステージに負けないくらい輝いてる。その手を―スゴく対象的な感じの―真っ黒な人がひいている。フードを被った大きな人。女の人の一回りは大きい。
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「あれって…ハックか?」
『良くわかったッスね、先輩。毎回ライブではガードのリーダーである、ハックが誘導してるそうッス。』
まぁあの体格だからな。しかもそういう危ない位置、他にさせないだろう。
「…怪しい奴はいるか?」
『今のところはナシッス。』
どのタイミングでいつ来るか。可能性は山のようにある。…なんて泣き言は言えねぇ。可能性が山のようにあろうがチャンスは一回。それさえ守りきれば俺たちの勝ちだ。
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『今日は私、ターシェ・フィーメルのライブに来てくださって本当にありがとうございます。精一杯歌わせて頂きますので、最後まで楽しんでいただけるとうれしいです。それじゃぁ、さっそくいきまーす!』
さっきよりも大きな歓声が響いて始まった。明るい調子の音が広がり、一つずつの形になって最後に女の人の声も混ざる。
とってもキレイだった。なんだか人の声なのに楽器から流れる音色みたいだ。音楽なんてそんなに聞いたことないからかな?とにかくすごいと思った。胸の中が熱くなって、脈が速くなってるみたい。
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あの声を初めて聞いたときのことはよく覚えている。心の中にまで響いてくるような透き通った声。今まで相当鍛えてきたんだ。歌い方は全然違う。でも、あの声の感じは変わらない。きっとみんなそこにひかれてるんだろうな。…すげぇよ、お前は。
にしてもずっと思ってたんだが、連中定期連絡をなんで徹底してないんだ?『なにかあったら連絡せよ』、なんて、有り得ないだろ。ライブの警備員じゃないんだ、万が一ってことがあるだろ?
そんな違和感を持っていても、よそ者の意見なんか聞くわけがないんだ。無駄な口論増やすよりはしっかりと見張ってた方がいいか…。
止まらない音楽はここにいる全員に駆けていく。
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もう何曲目か分からないほど流れて、女の人が話し始めた。
『長い間お付き合いありがとうございます!…次で最後です。ライブの時はいつもこの曲で終わらせてる、最後の曲です。聴いてください。…“また、明日”。』
歓声がまた上がった。今日一番じゃないかな?
歓声が終わったのと入れ替わりに音楽が聴こえてきた。ボールが跳ねるような、明るい音が響く。
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「最後か…。ここまでなんにも動かないっつーことは、これが終わったらくるんだろうな。」
『…ここまでないとガセってことも、って痛いッスよ、先輩!』
思いっきり髪を引っ張ってやる。
「そんな疑い持ってたらいざというとき動けないだろ。ガセならラッキー。来ると思って構えとけ。」
『す、すんません。…でも、ケルベロスもッスけど、連中もうんともすんとも言いませんね。』
確かに。いくらなんでも静かすぎねえか?
『そんなことよりちゃんと見張っていろ。』
…心配して損した。一端通路に出てまで確認してみたのに、時間の無駄か…。
でも、…何か引っ掛かる。
どうだった?って顔をして戻ってきた俺を見てるバンに、首を横にふって、問題ない、と合図を送った。
コンサートも終りを迎えていた。