第六十二話 同業者は仲が悪い
『デカイッスねぇ。』
この国で最もデカイドーム会場―サクヤドーム。ターシャが今日ライブをする場所だ。
生き残った奴に会うつもりだったんだが、先に行った警察との面会で疲れきっているから、っつわれて引き返すしかなかった。
また別の日に出直しだな。
つー訳で、会場まで来たって訳だ。
車ん中で、バンから聞いたんだが、ターシャの人気は相当なもんらしい。国を越えて人気があり、このコンサートのチケットもすぐに完売しちまって手に入らなかったらしい。
『こんな形ッスけど、歌聴けるなんて最高ッス。』
なんて言っていた。もしかして、レイン達も知ってんのか?なら、サインでももらって帰るか。
中に入るとすでに警備員が配備されていた。まだ開演までは六時間はある。っつっても、いつ来ても文句なんて言えねぇんだ。やり過ぎでも足りないくらいだろな。
案内されたのはターシェがいるの控室の真横の部屋。ここを基点として行動するようだ。中の空気は既にピリピリしていた。
ターシェと共にいたハックって奴がリーダーらしい。他は部下か?全員胸に同じマークのバッジを付けている。…にしても、目がこぇーなぁ。敵意剥き出しっつーとこか。
『よく来てくれた。みな、彼がこの国一のガードのジェイクだ。』
ハックが前に出て、手を出してきた。ちゃんと握手したさ。
『君たちが手伝ってくれるなら心強い。』
「ありがとう。」
社交辞令はさておいて、本題に入った。
『ケルベロスについての情報はあるが、やはり対決した者の意見を聞きたい。』
全員の目は相変わらず緩む様子はない。チーム以外の奴が入るのは気にくわねんだろうな。全く…あからさま過ぎるっつーの。
「奴の動きは半端なく速い。ケルベロスなんて変な名前で呼ばれるだけある。武器の火力もすさまじい。気ぃ抜いてると、殺られることに…。」
『殺られてんのはこの国の連中が弱いからだろ。』
ハックの右隣にいる少し長めの金髪の男が割り込んできた。
『アーディス!』
ハックの呼びかけを聞かず、アーディスと呼ばれた若い男は続けた。
『そーだろ、ボス?この国の連中は腰抜ばっかりさ。その中で一番強いっつってもたかが知れてるよ。』
『なんだと、先輩は本当に強いんスよ。』
バンが我慢しきれずに返した。
「気にするな、バン。」
俺がバンを止めるのと同じく、ハックもアーディスを止めた。
『失礼な事を…。申し訳ない。』
慣れてるよ。
『ですが、元は我々のヤマ。貴殿方を見くびる訳ではありませんがこちらの指示に従って頂きます。』