第五十二話 発覚
悪い事を考えると大概当たるものだ。
コンピュータルームにると、モニターには雇主が既に映っていた。
『やぁ。お疲れさん。今日はゆっくり休めたかね?』
「…そんな社交辞令はいいから、本題に入ってくれ。」
勿体ぶらずさっさと話してくれた方が楽だ。
『そうだな。前回の件はよくやってくれた。報酬はいつものように送っておく。あと、もう一つ。』
悪い勘が当たりそうだ。
『また新たに一件頼みたい。データはもう既に送ってある。』
「…了解した。」
『それでは健闘を祈る。』
これで今週に入って三件目か…。今までと比べてずいぶん間が詰まってるな。相棒に知らせるか…。今日は偽装用のマンションに戻ってる日だな。メールを送ろう。
前に言った埋め込まれたチップにはメール機能もついている。胸に送信用のバッチを付ければ、専用の機械で読んだり書いたり出来る。なんでもチップ自体にメールが送られるから他人に読まれる可能性が低くなるそうだ。
俺にはチップが付いていないのでこの方法が使えない。かわりにコンピュータで出来るようにしてくれてるんで問題ない。
どうゆう原理かよく判らないんだが、向こうからでもこのコンピュータを操作出来るらしい。相棒が出ているときはいつもこの方法で解読してもらっている。
本文を書き終え、送ろうとした時だ。
“リリリリリッ”
また電話だ。まさかとは思うが…。
『やっほぉう。俺が居なくて寂しかったぁ?』
やっぱりか…。
「電話回線を使ってのそこからここへの連絡はお前自身に目をつけられる可能性があるからやめておこう、と言ったのはお前だろ。何してる。」
一度でも目をつけられるとどこまでも見張られると言うのに…。
『仕事のデータ解析しなきゃなんないんでしょう?気にしちゃダメだよぉ。』
はぁ…コイツは。
「それで?終わったのか?」
『当たり前じゃん!今から送るよぉ。…出た?今回のターゲットはターシャ・フィーメル。最近売れ出した歌手さんだよぉ。“盲目の天使”って呼ばれてて、目が見えないんだ。明日の夜コンサートがあるからその中で仕留めて欲しいそうだよ。』
今度は歌手か…。他の二件と比べたらずいぶん感じが変わるな。
「わかった。これ以上の会話は不要だな。回線を切るぞ。」
『へ〜い。』
新しい仕事か…。一日空いてるのがせめてもの救いか。ふぅ…、と溜め息をついて椅子に座り、背もたれに体を預けた。
『電話終わったの?』
「ああ、今切ったところ…。」
直ぐに気づけなかった。あってはならないことが起こっているのに。
声のする方を振り返ると、そこには彼女…セフィリアがいた。