第四十九話 心の洗濯―前編
まぁ、帰るっつってもここまで着たからな。デスクまで行って仕事用のメールチェックだけはしといた。ああ、それとこれまでケルベロスが起こしたと思われる事件をまとめた資料が出来てたんで持って帰ることにした。こうして見ると結構な数になるんだな。ここまであってわかんないなんてな…。
後はバンに任せて俺は早々に部屋を出た。家に着いたのが…十ニ時前だったな。昼飯は昨日の残りもんでさっさと済ませて、さあ!これからだ。みんなにお返ししてやらないとな。
家の中は分担して定期的に掃除してるから、そうゆうとこより、いつもやらないところしねぇとな。例えば…庭の手入れとかな。
芝生なんて二週間もほったらかしにしてたら案外伸びてたりするなぁ。いやいや関心してる場合じゃねぇや。
倉庫から芝刈り機引っ張り出して、電源をいれる。古いもんだからちょっとうるせーけど、切れ味は文句なし。ただ、フランはあまり気に入ってないみたいだな。電源つけるといつも小屋の中に逃げこんでる。今日もそうだ。その様子がまたなんか面白いんだがな。
一通りかけ終えたら、次はフランの散歩と買い物いっぺんにしちまおう。
首輪に紐をつけて鎖を外す。その間フランずっと尻尾振ってやんの。喜んでもらえて光栄だよ。
街の建物は外観が悪くないようあんまし高いものはない。あって三階ってとこだな。だからデパートみたいなのはなくて、専門店が中央に固まってる。商店街って感じだな。
肉屋に八百屋に…いくつか店回って安くていいもんを探し回った。あんまり高ぇもん買うとレインに怒られるからな。行く先々で声かけられたなぁ。『よぅ!今日は綺麗な若妻さんじゃないのかい?』とか言いやがる。うるせぇっての。買っていかねぇぞ!
買い物が終わったら、気付けばもう三時を回っていた。そろそろ学校が終わるなぁ。せっかくだし迎えに行くか。
俺たちの家は街の中央から見て北東にあるんだが、学校は中央から見て南東。家から歩いて二十分かかるかどうかって距離だ。小、中、高校が固まってるから迎えにきやすい。学校に着いたら、授業が終わりみんな下校して行くところだった。小さい学年はもう少し早く終わるんだが、ウチは全員一緒に帰るから、校舎で遊んで時間を潰して、最後のレインが来るのを待ってる。部活は吹奏楽部に入ってるんだがな。俺がいないときは抜けてるみたいだ。フルートを使ってる。よくみんなが寝静まった後、外でみんなを起こさないよう吹いてるがみんな知ってる。
『あ!ジェイクだ!』
聞き慣れた声が遠くから聞こえた。グランドの方だな。声の方を振り向くとガンとスーエンが他の連中とサッカーしてんのが見えた。あの二人は最近中学に入ってサッカー部に入った。運動部だから帰りは別になっちまったな。遅くなった日は皿洗いの当番になる。
『ジェイクー!フランー!』
今度は校舎の方からか。ファムだな。見ると、カイも一緒だ。他に女の子が二人一緒にいたが、ファムは二人に何か話した後、カイを連れてこっちに向かって来た。ファムは今小三。すぐ向こうにある保育園に通ってるカイを迎えに行ってくれてる。いいお姉さんだな。
『昨日は遅かったのに。』
『今日は早いんだね。』
教室から俺の姿が見えたんだろうな。エルンとバンツが校舎の方から歩いてきた。ちょっと息が荒いとこ見ると、走って下りてきたんだろうな。
「悪かったよ。で、後はレインか。」
『もう来てるわよ。』
突然、真後ろから声がした。まぁ、気付いてたんだけどな。振り返るとそこにはレインが立っていた。