第四十三話 一人…また一人
―トラ1
さっきの音は後ろから聞こえた。何の音なんだ?そう思っていた矢先、足に何かが当たった感覚がした。
「ん……!」
自分の足元位は見える。ぼんやりとしているが、レモンのような形でそれより一回り小さい。緑色のそれは私の足にぶつかって止まった。
俺はそれを知っている。
すぐさま後ろの代表をそれから遠ざけようと、代表に飛び付く。
だが少し遅かった。
“ドカーン”
それ―手榴弾―が爆発した。代表を突き飛ばしたおかげで、代表は無傷。だが、俺は右脚をやられた。皮膚は焼けただれ、激痛が走る。歩くどころか、立ち上がることさえ不可能だ。
代表は恐怖で顔がひきつっている。足が震えているんだろう。立ち上がれそうにない。
私の部隊は“たとえリーダーが倒れたとしても護衛という任務に忠実にいろ”と教え込んだので、代表を囲んで陣を組んでいる。
だが、所詮人はそこまで冷静にいられない。囲んだ三人は気配を感じた所に撃ち始めた。銃声が虚しく響くだけで当たっているのかさえわからない。
“カチッ、カチッ”
三人とも弾を撃ちつくし、弾を入れ替えようとしたとき、左側から突然何かが飛び出してきた。あまりにも速く、次に目に映った光景は2が真っ二つに切り裂かれ、血が飛び散っていた。そして、飛び出してきた勢いのまま4に近づき、胸を突き刺した。
『く、くそっーーーー!』
4の右手にいた3はその影から間合いを開けようと、反対に飛びのきながら銃を構える。しかし、その動きは完全に読まれ、飛びのくのとほぼ同時に一度勢いを殺した影が、再び獣のようなスピードで追いかけて行き、そして…3の体を縦に斬り裂き、紅い血を噴き立たせた。
『ひ、ひぅああぁぁ!!!』
その光景を真の当たりにして、代表が逃げ出した。
代表を追いかけようと身体の向きを変えたその時、私は奴に銃弾を一発くれてやった。