第四十二話 漆黒から
―トラ1
Uターンしさっきの道よりビルの二階分ほどの高さがある道路を進んでいた。
『お前の仲間大丈夫か?』
代表の声が震えている。ケルベロスの名は知っているんだろう。
「心配は要りません。優秀な仲間です。十分時間を稼いでくれるでしょう。」
本当はこんなことを言ってられない。連絡が来ないのだ。だが、そんなことを言えばこの男は今以上に取り乱すだろう。ただでさえ、触っただけで暴れだそうなんだ。これ以上、刺激を与えては…。
だが、時間は十分稼いでくれてはいるようだ。後ろから近づいてくる物はない。もしかしたらまだ戦っているだけなのかもしれない。
そう思った直後だった。
“ガシャンッ”
突然車の天井がへこみ、ガラスが割れた。
『な、なんだ!?は、早くなんとかしろ!』
言われなくとも!直ぐに車を止めさせ、車の外へと出た。車の上にいる“物”を見てゾッとした。
人だ。しかも、左側半分が無くなっている。これは…リュウ1じゃないか。
「やってくれたな。全員、奴を探せ!」
代表を囲むように陣を組み、四方を見回す。少しでも早く奴を見つけなければここにいる人間全員が死ぬことになる。
周りは真っ暗だ。隣のもう一段高い道路の影に覆われ、黒い霧に包まれているかのように十メートル先でさえもハッキリ見えない。
自分の速くなっていく鼓動のみが聞こえる。
一瞬、チカッと光った。
“ブァッン”
見えた瞬間に引き金を引いた。それを契機に他の三人も一斉に引き金を引く。
数発撃ったところで止める。
鳴り響いた銃声が止む。
『や…やったのか?』
私の後ろで頭を鞄で隠している代表がやはり震えながら言った。
“カンッ”
言い切ったのとほぼ同時に後ろから何かがぶつかった音がした。