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第三十六話 鎖

ずいぶん対応能力の強い娘だ。いくら外に出られたからといっても、何も知らず、その上こんな姿の俺さえも信用しきっている。顔を見ればわかった。ここを完全に自分の居場所だと思っているんだろう。俺たちが何をしているかも知らずに…。


あの娘には空き部屋を与えた。山のような荷物を運びこんでる様は、新しい玩具を手に入れた子供のように喜んでいる。


その間に相棒に例のデータを渡した。


『もう依頼が来たんだぁ。早いねぇ。』


「早く開いてくれ。」


はいはい、っとめんどくさそうに返事をしてキーボードを叩いている。


仕方ないな。


買い物について行って疲れているんだろう。姉について来てもらうと言っていたからな。姉のナーシャは相棒がIT関連の仕事をしていると思っている。相棒が社員のデータを書き換え、自分がそこで働いているかのように偽装し、こことは別にマンションを借りているからこそ、騙せている訳だ。


ちなみに今回の事は恋人として紹介したはずだ。孤児院育ちで金がなく、悪徳業者に騙され借金を背負わされ、水商売に出されそうになったところを助けてそのまま恋に落ちたが、その娘は何も持ってないし、業者に見つかるとヤバイから、必要な物を一度で集めたいっというわけでお願いした、という設定になっている。…誰もが嘘だろうと思うことを涙流して同情する姉って…。弟に甘過ぎだろうがな。


『ほい!でたよぉ。』


相棒がクルッと回転した。モニターに近づくと、ある男の顔写真が出ていた。


『名前はウッド・サーテン。“アマデトラ”っていう食料輸入会社の代表取締役を任されている奴だよぉ。今日の夜十一時、ある取引を行うんだってぇ。それが行われる前に仕留めてくれ、てのが今回のミッション。』


十一時か…。あまり時間がないな。


「すぐに出る。サポート頼むぞ。」


『まかせといてよぉ。』


刀をさし、ショットガンを背負う。殺し屋を始めたときから付けている自分の一部ともいえる仮面の隠しきれない血の匂い。嫌悪したこともあったが、そのときからそんな資格は俺にはなかった。心を殺すその鎖を今日もまた、付けるのだ。

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