第三十四話 帰れる場所
…つ、疲れたぁ。あれからあのお姉さんとずっとビルの中歩き回っていろいろな物買ったんだけど、もう何買ったのかわかんないくらいいっぱい買っちゃったし、階段を上へ下へって行き来してたから、クタクタ。私そんなに運動したことないのに…。
買い物している最中にトーイッシュがあのお姉さんのこと話してくれたの。名前はナーシャ・エイデン。そう、トーイッシュのお姉さんなの。ファッション雑誌の編集長をしてるんだって。“長”が付いてるから、偉い人なんだよね?同じ女性だから何がいるかとか判るってトーイッシュが頼んだんだって。というか、姉弟なんだ!よく似てるのが姉弟じゃなかったの?全然違うよ?…世界って広いんだね。
選ぶとき大変だったんだよ。服なんて、あれこれ着せられて人形になった気分。いろんな感じに変身できたのは楽しかったけどね。ただ、ハイヒールだっけ?かかとに長い棒みたいなの付いてる靴。あれだけはなんだか気持ち悪かった。お姉さんはすぐ慣れるよ、って買ってくれたんだけど…。
お金払ってくれるなんて優しいなぁ…なんて思ってたら、
『働いて返してねぇ。』
だって。そうだよね。返さないなんて、よくないよね。むしが良すぎるって言うんだよね、そうゆうの。でも、いっぱいいいものもらったから、がんばるよ。掃除、洗濯なんでもかかってらっしゃい!買い物が終わって、お姉さんと別れて私とトーイッシュは帰って来た。別れ際にお姉さんが、
『お幸せにね!』
って言ってたのはなんなのかな?トーイッシュも赤くなって、どうしたんだろ?訊いても、
『気にしないで、何でもないからぁ。』
ってしか言ってくれないの。気になるよぉ。でも、応えてくれないから、ついて行くしかなかったんだけど。
前は狼さんに目をつぶってろ、って言われたから、どうやってあの部屋まで行ったのかわからなかったんだけど、今回はちゃんと見れた。覚えておかないとね。私のお家なんだから。