第三十話 苦悩
相棒たちを買い物に出したのは正解だな。静かでゆっくりできる。
相棒が捜索を始めた集団はまだいないから、今のうちに必要な物揃えとこうと言いだしたのが始まりだった。料理が気に入ったんだろう、株を上げようと考えたらしい。
シャワーを浴びて、身体を渇かした。この身体になったせいで、全身にドライヤーを当てないとならないのが悩み所だな。傷の部分はもうほとんど目立たない。回復力も上がっているのだ。ほとんどの傷は一日で治る。
自分の部屋に戻り、ソファにもたれた。クラッシックをかけ、目を閉じる。こうして音だけの世界に入っていると心が休まる。
最近、復讐ににえたぎっていた憎しみの感情がだんだんとどこかへ消えてしまっていくように感じていた。
疲れたということなのかもしれない。
人を憎しみを抱き続け、殺してきた人間たちを同類だから死んで当然だと思い続けてきた。だが、結局自らもそいつらと同じ汚れた人間になった。たとえ元に戻っても以前のように家族を持てるのだろうか…。いや、血で染まった人間が家族と平穏な生活を送れるはずはない。そもそも触れる権利さえないだろう。なら、俺は何のために…。
出口のない迷路をさまよっているような感覚だ。
そんなことを考えたところで何も解決しないのに…。考えずにはいられない。殺し屋として生きていくしか道がない俺が最後にどうなるのか…。誰かに殺されるのか…。それも悪くないのかもしれないな…。
そんなときだった。コンピュータルームから音がした。
“リリリリリッ”
これは…着信音か。かかって来るとしたらあいつらかそれとも…。
ソファから起き上がり、コンピュータルームへと向かった。