第二十七話 謝罪
疲れが残ってたのか、少しうとうとし始めたぐらいだった。
『お待たせして申し訳ない。』
ドアの方から声がした。少し驚いたよ。おかげで目が覚めたから丁度良かった。
声の主は昨日の秘書さんだった。ドアの方を見ると、やはり彼がいた。だが、見慣れない奴もいた。車イスに乗って、秘書についてもらっている男。俺と同じくらいの歳だろう。髪はブラウンで真ん中で別けたショートカットのような髪型。パッと見じゃあ女に間違えられるだろな。秘書さんが連れて来たってことは…。
『ご紹介いたします。こちらは新しく社長に就任しました、アーサー・ライヴェント様です。』
ビンゴ!新社長さんか。ファミリーネーム同じだから、息子さんってとこか…。
「社長さん…いえ、お父上のことは本当に申し訳ありませんでした。」
俺はそう言って、深々とお辞儀をした。失敗した後に血縁者と会うのはこれで三回目だな。他の二回は何年も前のことだ。あんまり思い出したくないことだな。
『いえ、もう済んだことです。父もいろいろとしてきたのだから、命を狙われても仕方ないことでしょう。』
気にするなってことか…。
他の二件もこんな感じだった。家族にあまり慕われてなかったのか、それとも、怒りを隠してるだけなのか…。どちらにしろ、こっちとしてはなんて言われても申し訳ないって気持になるんだけどな。逆に怒られたほうがいいくらいだ。先輩たちは割り切らねぇとやっていけねぇぞ、っつってんだけど、俺には無理な話だ。
後悔はやっぱし相手が汚い人間でも残る。命って奴は重いな…。