第二十五話 動き出す歯車
食べ終わって、コンピュータルームに相棒と共に行くことになった。昨日の結果だ。相棒がいつもの椅子に座り、俺は扉の横で腕を組み、壁にもたれる。いつものスタイルだ。
『まず、これ見て。』
そう言ってキーを押すとモニターにグラフが現れた。何色もあったが、一つを除いて、どのグラフも最大値まで上がっていた。
「なんだこれは?」
『昨日のテストの結果だよぉ。』
つまりありとあらゆる分野を試したところ、彼女は自分で言った工学の分野以外、あらゆる知識を持っている、ということらしい。
『そう!彼女が言った分野では学者もびっくりするほどの知識を持っていたよぉ。それがあれだけの数の分野全部だからぁ…。』
「天才か…。」
『そうゆうことだねぇ。でも、こっからがすごいんだ。』
ん?これだけの知識を持っているだけでも十分凄いが…。
『一度教えられた事、見た事全部頭に残るんだって。だから、試しに…。』
またキーを押すと、グラフが消えた。代わりに、一面の壁ほどもあるモニター全てを埋め尽くす程の言葉が映った。
『全部で三万六千語。これをたった三秒見ただけで、全部暗記し、見ずに全て言いきったんだ。』
…神がかり的な力だな。あんな娘がそれほどの力を持っているとは…。そんな力があることさえ知らなかった。まるで機械だな。その能力のためにあんな部屋に閉じ込められていたのか…。広まれば誰しも欲しがる能力。
「その能力が幽閉する理由だとして、なぜ彼女を隠す必要がある?」
公表して、何か問題があるのか?一躍有名人になるだろうから、あの会社の名も売れることになるはず…。出来ない理由…俺には一つしか思い当たらない。
『奇遇だねぇ。俺も同じ考えだよぉ。』
相棒も俺の顔を見て言いたい事が判ったようだ。
「…遺伝子操作か。」
『確証ゼロだけどねぇ。ただ、狼ちゃんみたいなの造れるなら、十分可能性はあるよねぇ。』
今まで何も手掛りが見つからなかったが、あの娘と繋りがあるのかも知れない。連れて来たときはあまり考えていなかったが、彼女をここに置いておくことになるな。
やっと歯車が動き出したと感じた。




