第二十二話 支えられて
初めは俺とレインの二人だけだった。
ボディーガードの仕事をしはじめてすぐの頃、世話になってた暴力団の親分―俺たちはオヤジって呼んでた―が死んだ。ガンだったらしい。俺は抜けた身だから、葬式なんて行けねぇ。だけど、オヤジには幼い娘さんがいたのを知ってたし、引き取り手が見つからないとも聞いていた。オヤジにはどうしようもない俺を拾ってもらったし、抜けるってときも理由も訊かずに、選別だっつって金までくれたオヤジ…。今度は俺が恩を返す番だ、と思い、引き取ることにした。初めはそんな理由だった。
だが、いつしかレインは俺にとって大事なもんになっていった。
もちろん、家族としてだ。変な意味でとるなよ!
誰かのためにっつーことで始めたボディーガードも汚職まみれの官僚だとか公表できねぇような事をしてきた汚い連中ばかりが相手でこの道を選んだことを後悔し始めてた。だが、帰ってきたら、遅くまで起きて待ってくれたレインの笑顔みるとそんな悩みは吹っ飛んだ。俺はレインを守るために命張ってるんだなって思えた。その時になって兄貴の気持ちがやっと判った。俺はレインに救われたんだ。
他のガキたちも親を亡くして受け取り手がないとこを家に連れて来た。こんな仕事してるからな。一人、二人…と増えていくうちに家が小さくなったから思いきってマンションからこっちに引越した。うるさくなっていく家族が俺にとって一番守りたいものに変わった。それが強くなれた理由なんだろうなぁ。
「ほら、お前ら、話は帰って来てからだ。学校行ってこいよ。」
まぁ、いつもこんな感じさ。夜に仕事に行って、あいつらが学校に行くぐらいの時間帯に帰ってくる。昨日は夕方ぐらいからだったんで、レインの飯が食えなかった。今食ってっけどな。
全員を送りだしたら、あのうるさい家もこのときだけは静かになる。さすがに疲れた、自分の部屋に戻ってすぐに寝ちまった。