第十九話 新たな任務
ボスの部屋に入ると、ボスが誰かと話していた。
ボスは元々ボディーガードで、“鉄壁”との異名を持つほどの実力者だった。今は現役を退いて、俺たちの面倒を見てくれている。とは言え、二メートルに迫るぐれぇの巨体、鍛えられた体に、スキンヘッド+サングラスなんざみたら、とても辞めた人間にゃあ見えねえな。
もう一人は…そうだ、今回の雇い主と一瞬にいた奴だ。秘書だったか。失敗したから報酬とかパーかねぇ、やっぱし。
『ジェイク。お前がミスるとはなぁ。耳を疑ったもんだぜ。で、呼んだのは、彼が仕事の件で話ぃあるそうだ。』
あー、報酬払うかぁ!ってか…。
『今回の件は残念な結果でした。契約上、報酬を払うことは出来ません。』
やっぱしか…。
『ですが、追加でお願いしたいことがあります。』
ん?
『“ケルベロス”を追って頂きたいのです。見つけて始末しろ、と言うのではありません。実は、奴は“ある物”を持ちさっているのです。それを取り戻して頂きたいのです。報酬は今回の二倍。さらに前金として、その半分をここでお支払いいたします。』
二倍!?…いや、これはボディーガードの仕事じゃねぇし…。
『ジェイク。これも立派なボディーガードだぞ。』
俺の言いたいことが判ったんだろうな。ボスが付け加えてきた。
『盗まれたもんってのが、“少女”だからな。』
「少女?」
『社長のお嬢様にあたる方で、どうしても社長の傍にいたいとおっしゃるので、隠し部屋に居て頂いたのですが、ご存じの通り隠し部屋は空になっておりました。連れされた可能性が大きいのです。生前の社長が大事にされていたお嬢様を救い出して頂けますか?』
なるほど、それなら答えは決まりだな。
「わかりました。お任せください。今度こそ、役目を果たしてみせます。」