第一七二話 登校と出勤と
長い間停滞して申し訳ありません。今後もかなり不規則になってしまうかもしれません。
『ちゃんと寝たの?こんなに早くでるなんて。』
「大丈夫。最悪、社内で仮眠取るさ。今日は早く帰るんだし、その分早く行っときたいんだよ。」
犬小屋の中でくるまっていたフランが、戸が開いた音を聞きつけ、駆け寄ってきた。行ってくる、と頭に手をのせ、一言挨拶をすると尻尾をさらに激しく降る。レインが出てくるのを見つけ、ついさっきまで向けていた瞳をあっさりとレインに向け、駆け寄った。少し切なくなる。
『まぁ、それならいいけど。』
両手でフランの頭を撫で回し、同じように一言挨拶をして足早に駆け寄ってきた。
『仕事、大変なんだね。今までで一番忙しそうに思うけど、体壊さないでよ?』
冗談のように言うが、本心から心配してくれているんだろう。確かにこれまでで最も駆け回っているかも知れない。そもそも犯人を追うような行動は、俺達ボディーガードの仕事じゃない。こんな刑事まがいの行為はほとんどしたことがない。誰かをいつまで警護しろ。ざっくり言ってしまえばそれだけだった。だからこそ、ケルベロス、なんて名前も知る必要はなかった。情報部からの報告を受け、それを考慮しプランをたててきた。そこにさらに捜査を加えてるのだから、今まで以上に忙しいのは当たり前だ。
「そんな脆くねぇよ。知ってるだろ?今のがいろいろ厄介なだけなんだよ。これさえ片付いたら、マシになるさ。」
明るく返すが、いつ終わるのか、と考えると性に合わないが、少し不安になる。どこにいるのか、いつ現れるのか、まるでわからないのだから。昨日も結局奴らは現れなかった。それどころか、別の人間を殺した、と今朝になって知った。すぐにでも行きたかったが、さすがに身体がもたないし、レインたちにかける心配も大きくはしたくなかった。
昨日の襲撃犯。結局誰ひとりとして生きて捕まえられなかった。襲撃前に毒を飲んでいたらしく、約二時間後に効果が現れ、死に至る。最初から死ぬつもりだった。それ以上の情報が出ていれば情報部が報告書にまとめてくれているはずだが、あまり期待ができるとも思えない。
『早く終わればいいのにね。ジェイクがやっつければいいんでしょ?正義のヒーローみたいに。』
「それが出来れば苦労しないっての。しかもなんだよ、正義のヒーローって。」
クスクスとレインは笑う。レインにしては随分幼い言い方をするもんだ。
『みんなそう思ってるんだから。悪い奴からみんなを守る、正義のヒーローのジェイク。』
似合わないセリフを言っているせいか、自分の言っていることに少し笑っている。が、言い終わると、その笑いをやめ、小さく、それでも真剣な声に変わった。
『だから、無理だけはしないでね。』
「ああ。」
それだけ言って、後はわかれるまで何も話さなかった。レインから唐突に腕を組んで歩いていった。