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第一六四話 裏切りの張本人 -裏-

『どうした?久しぶりの再会、俺は心待ちにしてたんだぞ?仮面くらいはずすたらどうだ?』


親しげな声、口調、月日を感じさせるものだったが、嬉しかった。こんな形でも友と会える事がこんなにも嬉しいとは思わなかった。


だが、それはあまりにも奇な言葉だった。音は耳にはいって来るものの、内容は頭に全く入ってこない。一拍おいてやっと名を呼ばれていた事に違和感を覚えた。


「なっ―」


言葉を忘れたかのように、口から出るのはただ息ばかり。頭の中でさえ全く働かない。


『落ち着けよ。俺は全部わかってる。今のお前の姿がどうなっているかだって。』


相手の弱みを握ると、嫌味な笑みを浮かべながら、その弱みをえぐる様はやはり昔のそれだった。冗談でされていた昔ならば軽く受け流せていたが、今は完全に首をつかまれているような状態だ。


『黒い獣だろ?』


「うるさい。」


なんとか頭を動かさなければ。少しでも時間を稼ぎたかった。構えた刀の刃を喉元へと近づいた。触れる寸前であるにも関わらず、表情一つ変えない。


わかる事を冷静に考えろ。ただそう言いつづけたが、冷静になどなれるはずがなかった。ありえない。つまり、今の状況から言えるのは−


『やっとわかったか?俺は、お前の、人生を、無茶苦茶にした、張、本、人、さ。』


一つ一つの言葉を噛み締めるように強く言い放った。あまりに唐突。あまりにも予想外、いや、どこかで考えていたのかもしれない。だが、あまりにも望んでいなかった事だ。


俺があまりの事に呆けてしまっているのを見かねて、仮面越しに俺の表情を読み取るように目を細めながらキースは続けた。


『何だよ?俺にこんなこと言わせるためにここに着たのか?』


得意げな笑いを見せてくる。


「…嘘だ。」


その一言を押し出すので精一杯だった。押し出したその声は、かすれて消えてしまいそうな、弱々しい音でしかなかった。その音をぴしゃりと払い落とされた。


『本当さ。だから俺はここにいて、お前はそんな姿なんだよ。』


どうしてそれが理由になるのか、よくはわからなかったが、キースの声は自信に満ちていた。キースはゆっくりと俺に近づいてくる。一歩、また一歩。気づけば目の前にいる。手を鉄の仮面へと伸ばしてきた。俺はどうしたらいいか考えるだけで精一杯だった。だから、仮面が外されるのをただ見ているだけだった。


『昔もカッコよかったけど、今もいい感じじゃないか。自信持っていいぜ。人前に出ればモテモテだろう。』


「どうしてだ?」


やはりキースは俺のこの姿を知っていた。ならば知りたい。なぜお前が知っているのか?張本人とは…どういう事なのか?


『どうして、か。時間もかからないだろうし、全部話してやるよ。楽にしろよ。』


巨大な机の前に置かれていた黒いソファーに腰掛けて、キースは話を始めた

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