第一六三話 類似 -狭間-
自律監視機械はどうもあの会社が独自に開発したもんらしかった。ネットワークの構成が全然違うんだ。面倒臭いからもう考えんのいやになった。探したらいいもんあったしねぇ。
試作機かなんか知らないけど、もう使わないんならさっさと片付けないとねぇ。
冷たいビールを音をたてて飲んだ。いやぁ、一仕事の後のビールはいいねぇ。
まだ動くみたいだったから、徘徊中のその他大勢が寄って来るようにサイレンを鳴らしてやった。案の定、大半の奴が集まったんだぁ。うまくいった、うまくいった。不良品の誤作動程度に片付けられるさ。
後はあいつが話を聞き出せばいい。うまく聞き出してちょうだいよ?水差さないよう通信切っとくから。
まだ早いけどそろそろ寝ようかなぁ。なんかコロコロ感情変えたせいか、すげー疲れた。後はなんとかなるだろうしねぇ。
イスから立ち上がって、数歩先のベットに飛び込んだ。バネの反発で少し体が浮いたのが、得に意味もないけど楽しい。ベット使う人なら絶対賛同してくれるだろ?…誰に聞いてんだか。
寝るつもりだが、テレビを点ける。俺の場合は寝るつもりだから、だけどな。静か過ぎると寝れねんだよぉ。なんでかねぇ。
ニュース番組が映ったみたいだ。かたっ苦しい服着たオッサンが原稿読んでる。字幕には“新社長就任”ってあるのが見えた。会見の映像に移るんだそうだ。
モニタの真ん中にいる奴は随分若かった。俺とそこまで変わらないんじゃないか?若くて社長だなんていい身分だねぇ、なんて思いながら、まぶたが重くなるのを感じてた。
“ドサッ”
急いで起き上がろうとしてベットからずり落ちた。腕に感じた痛みを無視しながら画面に近づいた。若い男の胸には見慣れたバッジが光っていた。
ウロボロス。蛇が自分の尾を噛んでわっかになってるダッサイの。あのハッキリしない優男以外つける奴なんていないと思ってた。意味のよくわからない任務を出してくるあの男さ。だけど、モニタの向こうにいる男の胸にはそれが光っていた。
今日はなんていい日なんだろうか。眠気なんて吹っ飛んだ。ああ、分かってる。同一人物だなんて決まってない。付ける奴が優男だけだなんて都合がいい考えだ。だけど、こんなにも繋がりが見えそうになった事はなかった。なぜか怪しい奴の名前を思いつく女なんていなかった。顔を見せない奴と同じバッジを付けた男なんて現れなかった。
若社長の名前は、アーサーか。どこの会社かと思えばなんだ、セフィーがいたとこか。あの会社当たりだったのか。そこまで被ってるだなんて、なんかの罠かねぇ。
くくくっ、と思わず笑いがもれた。
罠?いいねぇ。もしそうなら当たりに近づいてるって事じゃないか?そこから辿ればいいんだからねぇ。ヤバイ。楽しくなってきた。口がにやけてしかたない。
それじゃあ、遊ぶとしますかぁ。