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第一六二話 懐かしい声 -裏-

二週毎に一度3話投稿だったんですが、先週は滞ってしまって申し訳ありませんでした。また、今回からこのペースで続けていかせていただきたいと思います。もしよければお付き合い下さい。

エレベータが行き交う竪穴は電車の上にいるよりはまだマシだった。ただし、今度は別の障害が生じている。とはいってもこちらも想定内なんだが。


鉄の箱が上下に動き続ける中、上へと上っていかなければならない。かすりでもすれば肉をえぐられる。それだけの威力がある。幸い、通過する頻度は多くない上、ここには監視装置の類はない。


音で上がってくる気配がないかを確認し、体を大きくしならせながら上へ上へ飛び移って行く。脳に響く振動を感じれば、上る場所を移動し、また上り続ける。かなり高さがあるが、気が抜けないため、余計な事を考えずにすんだ。ただ、変わらない竪穴の壁を見ていると、自分がどこまで上っているのか、本当に上っているのかさえ危うくなってくる。それだけ先が見えないのだ。


「後何階だ?」


『後八階だよぅ。』


さらっと言い放つ。息が切れたりはしていないものの、中々苦労しているというのに。下から響いてくる振動に合わせて横に移動し、直ぐさま上へと上って行く。


後二階。ここまで来て相棒がやっと監視について言及し始めた。


『だいたいわかってると思うけど、このフロアには自律監視機械が徘徊してるんだぁ。しかも面倒な事にぃ、他と繋がってないネットワークなんだよねぇ。』


つまり、援護が全くできないという事だろうか。てっきり相棒が全て済ますと思っていた分、少し動揺した。


『それでねぇ、全部任せようかなぁ、って思ったんだけどぉ、いいもの見つけてね。一分だけ、時間が取れそうなんだぁ。』


いいもの?何だ、一体。いや、それよりも完全に放置しようとしていたのが問題だったんだが。


「重要な侵入なのに、随分行き当たりばったりだな。」


目的の階につき、皮肉を込めて言ったんだが、軽く受け流された。


『当日考えたにしてはマシな方だと思うけどぉ?それより、いいぃ?俺が合図したらぁ、一分で部屋まで乗り込んでよぉ?音とか気にしなくていいからぁ。』


「なんだ?何する気なんだ?」


ふふん、と鼻で笑った。慣れたから特に何も思わなかった。


『動かない不良品はさっさと捨てましょう、って事だよ。さぁ、もういいよぉ。』


唐突に来るかもしれないと、エレベータの扉に手をかけておいてよかった。と、言うより、隙間からもれたけたたましい高音のサイレンがなったから、手をかけたんだが。


扉を直ぐさま開けきると、サイレンだけが鳴り響いている。誰も何もいない。考える暇もなく、目的の部屋へと急いだ。全く、今回のプランは今までで最低だ。


重厚な木の扉を蹴り開けると、広い部屋の奥、窓と巨大な机の間にいる、こちらに背を向ける男に刀を向けた。


「ゆっくりこっちを向け。」


振り返えったその顔は、やはり懐かしく思えた。


『遅かったな、シン。』


ゆっくりと口が開かれ、聞こえた声は五年前と変わらなかった。

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